GNOME 2.28 リリース・ノート

1. はじめに

GNOME 2.28 は GNOME デスクトップの最新版です。GNOME デスクトップは人気が高く、複数のプラットフォームに対応したデスクトップ環境です。GNOME は使いやすく、不安定にならず、そして国際化やアクセシビリティの面でも十分満足できるデスクトップ環境を目指しています。GNOME はフリーでオープン・ソース・ソフトウェアで、E-メール・クライアントやグループウェア、ウェブ・ブラウザ、ファイル・マネージャ、各種マルチメディア、ゲームなど今時のコンピュータにユーザが普通に期待するアプリケーションを全て提供しています。さらに、デスクトップ及びモバイル系アプリケーションを開発する上で必要となる柔軟で強力なプラットフォームも提供しています。

図 1GNOME 2.28

GNOME デスクトップは数多くの新しい機能や改良点、そしてバグの修正と翻訳を伴い、半年毎にリリースされています。当然ながら GNOME 2.28 もこの「しきたり」に倣っています。GNOME、およびコンピュータの他のデスクトップ環境とGNOMEの違いを示す品質 (ユーザビリティとかアクセシビリティ、国際化、自由な精神など) についてもっとよく知りたいのであれば、GNOME についてのページをご覧になってみて下さい。

今から GNOME プロジェクトに参加して何に貢献できるのか、そして何が変わるのかを実感してみて下さい。

GNOME 2.28 には GNOME 2.26 以前に施された改善点の全てが含まれています。GNOME 2.26 で施された変更点については GNOME 2.26 のリリース・ノートをご覧になって下さい。

2. GNOME の友達になろう!

バージョン 2.26 の開発中に、GNOME Foundation では新しい 「GNOME の友達」 (Friends of GNOME) というプログラムを立ち上げました。サポーターは登録すれば GNOME Foundation を支援するための継続的な寄付を行えるようになりました。2.28 の開発中に頂いたフィードバックのおかげで、「GNOME の友達」プログラムでは毎月寄付する金額を選択できるようになりました。

「GNOME の友達」によって、フリーかつ、オープン・ソースなデスクトップを全ての人達に平等に提供していこうという GNOME プロジェクトの使命を個人がサポートすることができます。GNOME Foundation では、特に宣伝広告や支援活動を行うことなく、親切な個人ユーザから2009年には$20,000を献金していただきました。これらの献金は、いろいろなハッキング大会 (通称 GNOME Hackfest) や、GNOME プロジェクトで国際的な協力関係を作り上げていくために各国で開催されるイベントや展示会、あるいは古くからあるデスクトップや最新の携帯機器で GNOME デスクトップのソフトウェアを使えるようにする活動などに寄付されてきました。

詳細は Friends of GNOME のウェブサイトをご覧下さい。

3. 新しくなったこと 〜ユーザ向け〜

GNOME プロジェクトでは数百のバグを修正し、ユーザからの要望に基づいた改良を行いながら、GNOME 2.28 においても引き続きユーザとそのユーザビリティに重点を置いたものになっています。非常にたくさんの改良が施されているため、全ての変更と改善点をこのページだけに列挙することはできません。そこで、今回リリースされた中でユーザの立場に立ったワクワクするような機能のいくつかにスポットを当てて紹介することにします。

3.1. 接続ケーブルが消えた

GNOME 2.28 には GNOME Bluetooth モジュールの最初のリリースが含まれています。このモジュールで Bluetooth デバイスを管理することができます。GNOME Bluetooth ではマウスや、キーボード、ヘッドセットを含む数多くの Bluetooth デバイスをサポートしています。GNOME Bluetooth では Bluetooth ヘッドセットやヘッドフォンと、PulseAudio を統合します。

GNOME Bluetooth では携帯電話経由でのインターネット接続もサポートします。GNOME Bluetooth で携帯電話とペアリングすると、Network Manager には携帯電話経由でのインターネット接続のためのエントリが出現します。

図 2GNOME Bluetooth

3.2. 時間の記録が改良された

時間と仕事を記録していくタイム・トラッカー アプレットには多くの改善点があります。

カテゴリと、カレンダーの概要を表示する期間グラフを統合したまったく新しい概要の画面が提供されるようになりました。開始時刻には色が使われ、仕事を達成するのに要する時間の割合を簡単に見ることができるようになりました。

他の機能更新としては、開始時間をその場ですぐに更新できる改良された自動補完機能、深夜に働く人のためのサポートの改良、実行完了した以前のタスクを追加可能に、といっものがあります。最後に、エクスポート機能がかなり改善されました。エクスポートする前に、カテゴリや日付でアクティビティをフィルタできます。また、Evolution や Google カレンダーや他のソフトにインポートできる iCal 形式、XML、スプレッドシート向きの TSV (タブ区切り形式) など、新しいシンプルなエクスポート形式もサポートするようになりました。

図 3タイム・トラッカー

3.3. Empathy インスタント・メッセンジャー

Telepathy コミュニケーション・フレームワークを使用して作られている、GNOME のインスタント・メッセージング、およびコミュニケーションのためのアプリケーション Empathy にはユーザのコミュニケーションに役に立つ新しい、重要な機能がいくつも追加されました。

コンタクト・リストは多くの点で改良されました。ステータスをテキストで直接入力することで設定でき、また、以前に設定したステータスからも選択できます。コンタクトの整理も簡単になりました。コンタクトをドラッグ・アンド・ドロップで移動するだけです。表示メニューが追加され、コンタクトを簡単に並べかえたり、オフラインのコンタクトを表示したり、コンタクト・リストの大きさの設定を変更できます。

図 4Empathy コンタクト

会話ダイアログで Adium メッセージ風など、たくさんの新しいテーマをサポートするようになりました。ユーザ一覧中の「ユーザ」にツールチップが追加されました。チャット・ルームのユーザ一覧を非表示にできます。会話メニューからコンタクト・メニューが削除されました。そして、あなたの名前がチャット・ルームや会話中に登場すると、そのタブの文字が赤くなります。

音声および動画チャットをフルスクリーンにすることができるようになりました。コンタクト先が動画に対応していない場合、アバターが表示されます。リダイアル機能が追加され、簡単に再接続できるようになりました。

Empathy でデスクトップの共有ができるようになりました。GNOME リモート・デスクトップ・ビューアである Vino を使います。

Jabber や Google Talk などの XMPP のコンタクトでは、Geoclue を利用して位置情報がサポートされるようになりました。コンタクトのいる場所は、コンタクト一覧や、情報ダイアログ、および地図表示でコンタクトの名前の上にマウスを動かすと見ることができます。Empathy ではプライバシーを強化したいユーザのために、精度を落とすこともできます。Google Talk ユーザはコンタクトの位置を見ることができますが、位置情報を公開することはできません。Google が PEP を使っていないためです。

Empathy にはまったく新しいドキュメントが含まれています。Empathy で個々の操作をどのように実行すればいいのかを知る助けになります。

3.4. Epiphany ウェブ・ブラウザ

GNOME ウェブ・ブラウザである Epiphany はレンダリング・エンジンを Gecko から WebKit に変更しました。パフォーマンスの向上を除けば、この変更は目に見えません。長い目で見れば WebKit への変更には Epiphany のユーザにとって大きな御利益があります。WebKit への変更により、古い Gecko ベースのバックエンドに起因していた Epihany の未解決の多くのバグを修正できました。この新しいバージョンを試してみて、以前に遭遇した問題が解決しているかどうか、ぜひ確かめてみてください。

Epiphany が WebKit に乗り替えたことにより、ログイン名やパスワードを保存できない、という現象のバグに遭遇するかもしれません。このバグは 2.30 の開発中に解決されることでしょう。

3.5. 動画プレイヤーの改善点

GNOME のメディア・プレイヤー での DVD の再生は改善されました。DVD メニューの操作や前回再生した位置から再生を再開できるようになりました。YouTube プラグインも速度が向上しています。

3.6. カメラににっこり

ウェブカメラの写真、動画アプリケーションである Cheese も数多くの改善があります。ユーザ・インターフェイスを更新し、一度に複数の写真を撮る「バースト」モードを追加しました。Cheese が撮影する枚数と、撮影間隔の時間を選択できます。Cheese ではウェブカメラの「撮影」ボタンを使って写真を撮ることもできるようになりました。

Cheese のユーザ・インターフェイスはネットブックなどの小さな画面向けに最適化されました。画像のサムネイル・バーを右へ移動しました。以下のスクリーンショットでは、ネットブック向けに最適化したワイド・モードでバースト・モードを使ってる様子を示しています。

図 5ネットブック向けのワイドモード

Cheese についての詳細は、ここを見てね!

3.7. PDFに注釈を付ける

Evince ドキュメント・ビューアでは、テキストによる注釈を編集、保存できるようになりました。それぞれの注釈はポップアップ・ウインドウで表示されます。Evince ではクラッシュした後に表示した文書の復元もできるようになりました。

Evince が Microsoft Windows® プラットフォームに移植され、利用可能になりました。

3.8. フェード・イン、アウト

音量調整ツール ではサブ・ウーファーの調整と、チャンネルのフェーディングができるようになりました。また、設定を変更するとそれがすぐに適用されるようになりました。

図 6サブ・ウーファーとフェードのサポート

3.9. えーと、まだまだあります...

前述した大きな変更の他にも小さな追加や (毎度おなじみの) 改善点をいくつか紹介します。

  • GNOME のメニューやボタンでは、デフォルトではアイコンを表示しないよう、全体を通じて標準化されました。動的なオブジェクトのあるメニューのアイテム、たとえば、アプリケーション、ファイル、ブックマーク、デバイスなどはその例外で、アイコンを表示できます。この変更によりルック・アンド・フィールを標準化し、よりすっきりしたインターフェイスをユーザに提示していきます。
  • Tomboy メモ は保存したメモや設定ファイルの保存場所をfreedesktop.org の標準に合致した場所に移動しました。
  • 電源の管理 は複数のバッテリを持ったラップトップもサポートするようになりました。DeviceKit のディスクでディスクのスピンダウンもできりょうになりました。
  • GTK+ のファイル・lpr 印刷バックエンドでは複数のページをシートごとに印刷する機能を追加しました。
  • Gedit が Mac OS® X に移植されました。
  • Pango が新しい OpenType エンジンを使うようになってメモリの使用量が少なくなり、壊れているフォントのサポートを改善することによって、テキストのレンダリングが向上しました。
  • VTE の改善によって、GNOME 端末 でのメモリの使用量がかなり減りました。
  • GNOME CD/DVD 作成ツール である Brasero が複数のディスクに分割してデータを書き込むことができるようになりました。また、書き込む前にディスクの使用量をグラフィカルに表示できるようになりました。

4. 新しくなったこと 〜アクセシビリティ〜

GNOME には、コンピュータを使うのに困難が伴うような障害を持つユーザや開発者を含め、誰もがソフトウェアを楽しめるようにするある種の「やさしさ」みたいなものがあります。これを支援するため、GNOME は GNOME アクセシビリティ・プロジェクトを立ち上げ、libre (自由な) デスクトップでは今や標準となったアクセシビリティ・フレームワークを開発しました。

GNOME 2.28 ではいくつかの改良点を含め、引き続きアクセシビリティの資格認定レベルを維持した状態で構築されます。

4.1. Orca スクリーンリーダ

Orca スクリーンリーダは、この GNOME 2.28 リリースに向けて 140 個を越えるバグを修正しパフォーマンスが改善されました。それらの改善には次のものが含まれます:

  • プログレス・バーの異なった「おしゃべりレベル」をサポートするようになりました。プログレス・バーがアクティブなウィンドウになくてもプログレス・バーが更新されると読み上げられるようにすることができます
  • クリックすること無しにマウスを移動可能に
  • マウスオーバーに表示されているアイテムへのインタラクトを含む、マウスオーバーのサポート。
  • テキストの編集中にスペル・ミスした単語の提示
  • 読み上げ、点字生成の完全な書き直し。読み上げ生成器でサウンドを鳴らすことこともできるように

4.2. WebKit のアクセシビリティ・サポート

WebKit のアクセシビリティの向上にも大きな努力が注がれました。特に、キャレットのナビゲーションの追加や、ATK のアクセシブル・テキスト・インターフェイスの実装の開始といったものです。アクセシブル・テキスト・インターフェイスが完全に実装されると、ユーザはマウスを使うことなしに内容にアクセスしたり、Orca スクリーン・リーダを使って音声や点字で「見る」ことができるようになります。

5. 新しくなったこと 〜開発者向け〜

次に示す内容は GNOME 2.28 のプラットフォームを利用する開発者には知っておいてもらいたい重要な変更点です。この内容に特に興味がないのであれば、このセクションを飛ばして次の「セクション 6 - 国際化」をご覧下さい。

この GNOME 2.28 はデスクトップだけではなく開発者向けのプラットフォームもまた最新版です。GNU LGPL の下で利用できる API や ABI が安定した一連のライブラリは、クロス・プラットフォームのアプリケーション開発に利用できます。

廃止になったライブラリの利用

GNOME 3.0 から、廃止が予告されている(Deprecated)さまざまなGNOMEのパーツが削除されます。対象となるコンポーネントにはlibart_lgpllibbonobolibbonobouilibgladelibgnomelibgnomecanvaslibgnomeprintlibgnomeprintuilibgnomevfs といったライブラリが含まれています。GNOME デスクトップの一部として提供されているアプリケーションに対しては「整理すべき項目の一覧」に従って、廃止になったライブラリや API の呼び出しを無くしていく予定です。これにより GNOME 3.0 へのスムーズな移行を実現します。

開発者は自分のアプリケーションについて、このルールに従うことが強く求められています。なお、 この作業に関して何か手伝いたいと考えている開発者 (または挑戦してみたいと考えている開発者) のために、GNOME goals の Wiki には未だ完了していない作業の一覧が用意されています。jhbuld ビルド・ツールでサポートされているモジュールについては、残っている作業の概要が自動生成・更新されており、ここで見ることができます。

5.1. プラットホーム・クリーンナップ

GNOME 3.0 に向けて、非推奨のモジュールや機能を削除する大きな努力が成されてきました。

GNOME 2.28 では、esound や libgnomevfs、libgnomeprint、libgnomeprint に依存しているアプリケーションはもはやありません。

GNOME 2.28 での他の GNOME プラットフォームの改善点:

  • libart_lgpl への依存が2つのモジュール(eog と gtkhtml)から取り除かれました。
  • libbonobo(ui) への依存が5つのモジュール (gnome-control-center、gcalctool、gnome-media、gtkhtml、accerciser) から取り除かれました。
  • libglade への依存が 28 のモジュールから取り除かれました (accerciser、 alacarte、 gnome-control-center、 dasher、 empathy、 gcalctool、 gnome-games、 gnome-netstatus、 gnome-nettool、 gnome-mag、 gnome-menus、 gnome-panel、 gnome-power-manager、 gnome-screensaver、 gnome-session、 gnome-settings-daemon、 gnome-system-tools、 gnome-utils、 gtkhtml、 hamster-applet、 libgnomekbd、 orca、 pessulus、 seahorse、 vino、 vinagre、 yelp、 zenity)。
  • libgnome への依存が14のモジュールから取り除かれました (anjuta、 gnome-control-center、 dasher、 evolution-webcal、 gconf、 gdl、 gdm、 gnome-desktop、 gnome-media、 gnome-system-tools、 gok、 gtkhtml、 vino、 yelp)。
  • libgnomecanvas への依存が3つのモジュールから取り除かれました (anjuta、 gtkhtml、 zenity)。
  • libgnomeprint(ui) への依存が一つのモジュールから取り除かれました (gnome-games)。
  • libgnomeui への依存が 16 のモジュールから取り除かれました (anjuta、 gnome-control-center、 dasher、 deskbar-applet、 gnome-mag、 gnome-media、 gnome-settings-daemon、 gnome-system-tools、 gnome-utils、 gok、 gtkhtml、 hamster-applet、 nautilus、 orca、 vino、 yelp)。
  • libgnomevfs への依存が三つのモジュールから取り除かれました (dasher、 gnome-mag、 gnome-utils)。
  • 多くのモジュールは AM_SILENT_RULES や Shave の利用によって、コンパイル時により良い、すっきりとした出力をするようになりました。詳しくは http://live.gnome.org/GnomeGoals/NicerBuildsをご覧下さい。
  • いくつかのモジュールでは GIntrospection を使い始めました。詳しくは http://live.gnome.org/GnomeGoals/AddGObjectIntrospectionSupport を見てください。

また、多くのアプリケーションで GTK+ や GLib の非推奨のシンボルの使用を取り止めました。GTK+ や GLib のトップレベルのヘッダのみを include するという新しいポリシーを適用しました。

5.2. GTK+ 2.18

GTK+ のバージョン 2.18 は GTK+ ツールキット・ライブラリの最新版で、GNOME のプラットフォームの「心臓部」に相当します。GTK+ 2.18 には、次期バージョンの GTK+ 3.0 に向けたコードの整理や、大規模なバグの修正、開発者向けの新しい機能が含まれています。

ファイル選択ダイアログには多くの改善点があります。どう並び替えたのかを覚えておくようになり、バックアップ・ファイルを表示しなかったり、ファイルの大きさの列を表示したりするなどデフォルトで適切な設定がなされています。また、パス・バーでの省略表示も改善しています。

GTK+ には以下を含む他の多くの改善点があります:

  • GtkEntry 型のウィジェットでプログレスバーを表示できるようになりました。
  • GtkEntry ではモデルとビューを分離しました。
  • GtkLabel にURIを埋めこんで表示できます。
  • 印刷機能では選択範囲の印刷をサポートします。
  • ページ設定を印刷ダイアログに埋め込むことができます。
  • アクセシビリティ向上のために、ステータス・アイコンには適切なタイトルが付けられました。
  • 新たに GtkInfoBar ウィジェットが追加され、ダイアログの代わりにメインウィンドウにメッセージを表示できるようになりました。
  • GTK は automake の新しいバージョン (automake 1.7 はもはや必要ありません) でコンパイルできるようになりました。また、"make V=0" コマンドによって「サイレント・モード」でコンパイルできます。

5.3. GLib

GNIO が GIO に統合され、IPv4 や IPv6 のアドレスの扱い、ホスト名の解決、IPアドレスの逆引き、低レベルなソケットI/O、ネットワーク接続やサービスの扱いのためのAPIが含まれるようになりました。

GArrayGMappedFile、そして GTree が参照カウントを持つようになりました。

メインループではスレッド毎のデフォルトのコンテキストをサポートします。

GIOStream およびそのサブクラスによる読み書きのアクセスへのサポートが追加されました。

GLib でファイルごとのメタデータもサポートもするようになりました。

5.4. GNOME ドキュメンテーション

新しい GNOME ドキュメンテーション XML 言語 "Mallard" が Yelp や gnome-doc-utils でサポートされるようになりました。

ドキュメンテーションの著者向けに説明しますと、Mallard はトピック志向のヘルプのために明確に設計され、Docbook よりも簡単に学べるフル装備の XML マークアップ言語です。

Empathy のヘルプは Mallard で書かれた最初の GNOME 文書で、Creative Commons Share-Alike 3.0 ライセンス に移行した最初の文書でもあります。GNOME の文書は将来的にこのライセンスへと移行します。

5.5. GNOME Bluetooth

プラグインがサポートされるようになりました。デバイスの設定中にプラグインが追加され、GNOME のアプリケーションが Bluetooth のデバイスを使うことができるようになります。

ボタンや選択リストを含む今風の Bluetooth デバイス選択ウィジェットが追加されました。

5.6. Epiphany ウェブ・ブラウザ

Epiphany が WebKit へ移行することにより、Epiphany で開発者向けのたくさんの機能が利用可能になりました。

WebKitGTK+ は Javascript の処理が劇的に速く、フットプリントが小さく、GObject APIや組み込みのウェブ・インスペクタを含んでいます。Epiphany は新たに Seed (JavaScript) 拡張をサポートし、それによって Python のサポートが取り除かれました。

また、Epiphany は HTTP の実装 にlibsoup を使い、GNOME 全体と同じようにプロキシが動作をします。libsoup で未対応の機能は HTTP のキャッシュと content encoding です。

最後になりましたが、ウェブ表示でのコンテキスト・メニューは Epiphany 用にカスタマイズされておらず、デフォルトの WebKit のビューがそのまま使用されています。

5.7. タイム・トラッカー アプレット

すべての機能はイントロスペクション可能な D-Bus API 経由で利用できるようになりました。

5.8. GNOME-Media

GNOME-Media は vumeter、 CDDB および GNOME-CD を外しました。

5.9. Totem

xine-lib バックエンドは Totem から取り除かれ、非同期のパースAPIが追加されました。

5.10. Vinagre

GNOME のリモート・デスクトップのビューア Vinagre に新しいプラグイン・システムが追加されました。新しいプロトコルのサポートは Vinagre のプラグインを書くだけでよくなりました。Vinagre の新しいプラグインとして VNC や SSH が含まれています。

5.11. Brasero のメイン・ウィンドウ

Brasero はライブラリとユーティリティを libbraser-burnlibbrasero-utils へ分離しました。

6. 国際化

GNOME 翻訳プロジェクト (GTP) のメンバーによる全世界規模的な努力のおかげで、GNOME 2.28 では 50 の言語 (最低 80% 以上翻訳済) をサポートするに至りました。ユーザおよびシステム管理者向けマニュアルの翻訳も多くの言語で含まれています。

サポートしている言語:

  • アッサム語
  • アラビア語
  • イタリア語
  • ウクライナ語
  • エストニア語
  • オランダ語
  • オリヤー語
  • カタロニア語
  • カタロニア語 (バレンシア)
  • カンナダ語
  • ガリシア語
  • ギリシア語
  • グジャラート語
  • スウェーデン語
  • スペイン語
  • スロベニア語
  • セルビア語
  • タイ語
  • タミル語
  • チェコ語
  • テルグ語
  • デンマーク語
  • トルコ語
  • ドイツ語
  • ノルウェー語 (ニーノシュク)
  • ノルウェー語 (ブークモール)
  • ハンガリー語
  • バスク語
  • パンジャブ語
  • ヒンディー語
  • フィンランド語
  • フランス語
  • ブラジル系ポルトガル語
  • ブルガリア語
  • ヘブライ語
  • ベトナム語
  • ベンガル語
  • ベンガル語 (インド)
  • ポルトガル語
  • ポーランド語
  • マケドニア語
  • マラーティー語
  • マラーヤラム語
  • リトアニア語
  • ルーマニア語
  • ロシア語
  • 中国語 (中国)
  • 中国語 (台湾)
  • 中国語 (香港)
  • 日本語
  • 英語 (アメリカ、イギリス、カナダ)
  • 韓国語

この他にも多くの言語を部分的にサポート (最低 50% 以上翻訳済) しています。

GNOME を別の新しいプログラミング言語で書き直すことと同じくらいの規模になると予想されるこの翻訳作業は、たとえ専門の翻訳チームがあったにしろ「半端のない作業」になる場合があります。今回のリリースではベンガル語チームの非常に素晴しい努力により、ベンガル語での翻訳率が 25ポイント以上も向上し、ユーザ・インターフェイスの翻訳は 80% の区切りを越え、83% にまでなりました。また、ウェールズ語、ブルターニュ語、そしてセルビア語のチームが翻訳率を 10ポイント以上も向上させたことを祝福します。

詳細な翻訳率とその統計データは GNOME の翻訳ステータスのサイトをご覧になってみて下さい。

7. GNOME のインストール

GNOME 2.28 に含まれる全てのソフトウェアを一枚の CD に収めた LiveCD を使って、最新版のデスクトップを実際に体験してみることができます。インストール作業をせずに、LiveCD からお使いのコンピュータを直接起動することができます。LiveCD は GNOME の BitTorrent のサイトからダウンロードできます。

GNOME 2.28 を新規にインストールしたりアップグレードするのであれば、お使いのベンダーまたはディストリビューションの公式パッケージを手に入れることをお勧めします。人気のあるディストリビューションであれば、すぐに GNOME 2.28 を利用できるようになるでしょうし、既に GNOME 2.28 が含まれた開発版がリリースされている場合もあります。GNOME のパッケージを配布しているディストリビュータの一覧とそのバージョンについては Get Footware のページをご覧になってみて下さい。

もしあなたが勇敢で忍耐強く、GNOME をソースからビルドしたいのであれば、Git リポジトリから GNOME の最新版をビルドすることのできる JHBuild をオススメします。この JHBuild では gnome-2.28 というモジュールセットを使って GNOME 2.28 系をビルドすることができます。

正式にリリースされた tar ball から直接 GNOME をビルドしていくことも可能ではありますが、我々は JHBuild を使うことを強く推奨します。

8. GNOME 2.30 に向けて

GNOME の開発は、この GNOME 2.28 で終わりというわけではありません。2.28 をリリースしたきっちり半年後には、次の GNOME 2.30 をリリースできるようにするために、もう既に作業が始まっています。

GNOME 2.30 (2010年3月リリース予定) あるいは GNOME 2.32 (2010年9月リリース予定) が GNOME 3.0 になるかどうかについての決定が2009年11月はじめに行われる予定です。新規、または現在の GNOME アプリケーションやライブラリの進捗状況や、アクセシビリティやユーサビリティに与える影響を考慮して決定が行われます。

GNOME 2.30 では引き続き従来のデスクトップ・プラットフォームとアプリケーションを提供しますが、GNOME Shell の新しいユーザ・インターフェイスや、GNOME Activity Journal によるコンピュータ上のファイルの簡単な閲覧や検索も売りにするかもしれません。開発者向けには、GNOME 2.30 では多くの古いライブラリを非推奨にします。

GNOME Shell プレビュー版は 2.28 で利用可能で、ダウンロードできます。GNOME Shell はコンポジット・デスクトップの力を使った革新的で新しいユーザ・インターフェイスが特徴的です。GNOME Shell によって新しいワークスペースを追加したり、頻繁に使うアプリケーションを起動したり、良く使うファイルや文書にアクセスするのが簡単になります。

図 7GNOME Shell

GNOME Activity Journal はコンピュータのファイルを閲覧したり探し出したりするのが簡単になるツールです。ファイルの変更履歴を時間順に記録し、タグを付け、ファイルのグループ間を関連付けます。GNOME Activity Journal は、タグ付けやアイテムのブックマーク機能を持つ、デスクトップ上の活動履歴を記録する Zeitgeist エンジンのグラフィカル・ユーザ・インターフェイスです。

Tomboy Online も GNOME 2.30 に予定されています。ウェブ経由で Tomboy のメモを同期したりアクセスしたりできるようになります。

GNOME ロードマップ には次のリリース・サイクルに対する開発計画の詳細がまとめられており、GNOME 2.30 のリリース・スケジュール も今年始めには公開されており、GNOME wiki で入手できます

9. 謝辞

このリリース・ノートは、GNOME コミュニティからの助けを得て Paul Cutler 氏が編集しました。翻訳は日本語翻訳チームの草野 貴之が行いました。コミュニティを代表して、この GNOME のリリースを実現した開発者と貢献者に感謝の念を捧げます。

このリリース・ノートの成果を自由に翻訳して頂いて構いません。もしあなたの言語に翻訳したいのであれば GNOME 翻訳プロジェクトまで連絡して下さい。