GNOME 2.24 リリース・ノート
- 1. はじめに
- 2. 新しくなったこと 〜ユーザ向け〜
- 3. 新しくなったこと 〜アクセシビリティ〜
- 4. 新しくなったこと 〜開発者向け〜
- 5. 新しくなったこと 〜モバイル分野向け〜
- 6. 国際化
- 7. GNOME のインストール
- 8. GNOME 2.26 に向けて
- 9. 謝辞
1. はじめに
GNOME 2.24 は GNOME デスクトップの最新版です。人気が高く複数のプラットフォームに対応したデスクトップ環境です。GNOME は使いやすく、不安定にならず、そして国際化やアクセシビリティの面でも十分満足できるデスクトップ環境を目指しています。フリーのオープン・ソース・ソフトウェアから構成されている GNOME は、E-メール・クライアントやグループウェア、ウェブ・ブラウザ、ファイル・マネージャ、各種マルチメディア、ゲームなど今風のコンピュータ環境でユーザが期待する共通のアプリケーションを全て提供しています。さらに、デスクトップ及びモバイル系アプリケーションを開発する上で必要となる柔軟で強力なプラットフォームも提供しています。
GNOME デスクトップは数多くの新しい機能や改良点、そしてバグの修正と翻訳を伴い、半年毎にリリースされています。当然ながら GNOME 2.24 もこの「しきたり」に倣っています。GNOME と他のコンピュータのデスクトップ環境との違いを示す品質 (ユーザビリティとかアクセシビリティ、国際化、フリーな精神など) についてもっとよく知りたいのであれば、GNOME についてのページをご覧になってみて下さい。
今から GNOME プロジェクトに参加して何に貢献できるのか、そして何が変わるのかを実感してみて下さい。
GNOME 2.24 には GNOME 2.22 以前に施された改善点の全てが含まれています。GNOME 2.22 で施された変更点については GNOME 2.22 のリリース・ノートをご覧になって下さい。
2. 新しくなったこと 〜ユーザ向け〜
GNOME プロジェクトでは数百のバグを修正し、ユーザからの要望に基づいた改良を行いながら、GNOME 2.24 においても引き続きユーザとそのユーザビリティに重点を置いたものになっています。但し非常にたくさんの改良が施されているため、全ての変更と改善点をこのページだけに列挙することができないので、今回リリースされた中でユーザの立場に立ったワクワクするような機能のいくつかにスポットを当てて紹介することにします。
- 2.1. 連絡を取り合う
- 2.2. 時間を上手に記録していく
- 2.3. Ekiga 3.0
- 2.4. ファイルの管理
- 2.5. デスクバーを使っていろいろなことをやる
- 2.6. 新しい画面の解像度の設定ダイアログ
- 2.7. サウンドのテーマの新しいサポート
- 2.8. 改善されたデジタル・テレビの機能
- 2.9. 格別な美しさ
2.1. 連絡を取り合う
GNOME 2.24 に Telepathy という通信専用のフレームワークに準拠したインスタント・メッセンジャー・クライアントが加わりました。
さらにこの Empathy は、Nokia の N800/N810 デバイスで提供されている XMPP/SIP プロトコル・ベースの音声と映像を用いたネット会議を行えます (但し、映像を有効にするにはシステムにインストールされている GStreamer が H.263 コーデックをサポートしている必要があります)。Empathy は Ekiga とはかなり密接な関係にあります。Ekiga は音声と映像をサポートした GNOME の SIP クライアントです (詳細は「セクション 2.3 - Ekiga 3.0」をご覧下さい)。
Telepathy はアプリケーションからインスタント・メッセンジャーの機能にアクセスするための汎用的なフレームワークを提供しています。このライブラリを使うと、例えば Jabber/XMPP とか Google Talk、MSN Messenger、Apple の Bonjour/Rendezvous (ローカル・ネットワークのチャット) といったたくさんのプロトコルを使いこなせます。
さらにアプリケーションからインスタント・メッセンジャーのセッションを利用できます。Empathy のクライアント同様に、GNOME 2.24 では在席情報やそのステータスをアプリケーションに追加できるライブラリや、他のアプリケーションとコラボレーションしたりインターネット越しにゲームを楽しむためにファイルを転送したり、チューブと呼ばれる一種のソケットの設定を行えるライブラリを提供しています。これらの技術をアプリケーションに適用する方法など詳細は「セクション 4.4 - インスタント・メッセンジャー用のライブラリ 」をご覧下さい。
2.2. 時間を上手に記録していく
多くのビジネスマンにとって、いろいろな課題を解決したり得意先を訪問するのにどれだけの時間を割いているかを正確に記録し分析しておくことは大切なことでしょう。そのために多くの人達が専用の「システム」を持ち歩きます (例えば日記のようなものをつけるとか自分の記憶に頼るとか)。とはいえ、それは信じられないほど退屈な作業です。今日の世界ではほとんど全てのことをコンピュータを使って何とかできます。そういうわけで、GNOME 2.24 には簡単に時間を記録しておくことが可能なパネル・アップレットが新たに追加されました。
あなたが今どんな作業をしているのか、そしてそれにどれくらいの時間をかけているのかといったことがパネルに表示されるようになっています。このアプレットのボタンをクリックするとアクティビティを変更したり、本日のアクティビティ度を表示することも可能です。必要であれば、コンピュータがアイドル状態になった時に計測を一旦停止するような設定にすることもできます。
アクティビティはいろいろなグループに分類できるようになっており、アクティビティの種類とか得意先の名前とかも記録できます。また、アクティビティのログを表示したり編集することも可能で、日間/週間/月間の単位で一番時間を費やしたものをグラフで表示することも可能です。
2.3. Ekiga 3.0
Ekiga は SIP ベースの音声及び映像を用いたネット会議を行う機能が満載な GNOME のクライアントです。この Ekiga 3.0 が GNOME 2.24 に合わせてリリースされたことを光栄に思います。
この Ekiga 3.0 はアドレス帳や従来の在席情報のインタフェースが新しくなったのに加え、SIP を使った新しい在席情報の追加や PBX 回線の監視、従来よりも良い映像を提供するコーデック (H.264 と H.263+ と MPEG-4、Theora) のサポート、動画のアクセラレーション、フルスクリーン表示、そして「堅牢な」ネット会議を行うために SIP 関連の改善など、ほんとうに機能が満載です。
2.4. ファイルの管理
GNOME 2.24 では従来のアイコン表示と一覧表示に加え、既に他のデスクトップ環境ではお馴染みのコンパクト表示が新たに追加されました。メニューからControl+3 を押下してみて下さい)。
を選択してみて下さい (あるいはキーボード・ショートカットとしてアイコン表示と一覧表示同様に、コンパクト表示におけるアイコンの大きさは
メニューにあるズーム・オプションを用いて変更することができます。新たにファイル・マネージャのブラウザ・モードでタブをサポートすることになりました。1つのブラウザ・ウィンドウの内容をコンテンツに持つ複数のタブを素早く切り換えることが可能です。
現在使われているほとんどのファイルシステムは、ファイル名にどんな文字でも指定できるようになっています。但し、残念ながら FAT のファイルシステムは例外です。一般的に FAT は USB Thumb ドライブとか携帯式の楽曲プレイヤーで使われており、ファイル名に句読点の文字を含めることができません。GNOME 2.24 では、ファイルをコピーする時にファイル名として使用できない文字が含まれていることを検出し、自動的にそれらの文字を "_" (アンダースコア) で置きかえていくようになったので、ユーザが改めてファイル名を変更する必要はありません。
GNOME 2.24 ではファイル名の自動補完 (Tab 補完) も改善されました。場所バーで Tab キーを使ったファイル名の補完処理がさらに高速になり、予測の精度 (検出できる候補の数) も上がりました。さらにパス名の区切り毎に補完を完了できるようになり、候補が全く見つからなかった場合のフィードバックも提供できるようなりました。
2.5. デスクバーを使っていろいろなことをやる
GNOME 2.24 に含まれるデスクバーには面白そうな新しいプラグインがいくつか追加されています: 電卓、Google 検索 (とコード検索)、Yahoo!、Wikipedia Suggest、そして Twitter と identi.ca の改良版です。
さらに、直接インターネット上にあるデスクバーのプラグイン・リポジトリから新しいプラグインを簡単にダウンロードしてインストールすることができるようになりました。
2.6. 新しい画面の解像度の設定ダイアログ
非常に多くのコンピュータ (特にラップトップ) でマルチヘッドと呼ばれる複数モニタのサポートが増えてきています。2台目のモニタに接続できるユーザも増えてきているのはコンピュータをクローン (例えばプレゼンを発表する際のプロジェクタ) として利用するか、あるいはデスクトップ環境を拡張するケースが出てきたということでしょう。
GNOME 2.24 には改良が施された画面の解像度の設定ツールが含まれています。X.Org が策定した新しい XRandR バージョン 1.2 の仕様に対応したこの設定ツールのダイアログを使えば、ユーザは簡単に複数ある設定をそれぞれのモニタに適用していくことができます。モニタにはそれぞれ名前が付けられ、その名前が画面の左上に表示されるので簡単に現在の画面を識別できます。
ここで変更した内容はすぐに反映されます。GNOME の再起動は必要ありません。
X.Org 提供のビデオ・ドライバの中には XRandR のバージョン 1.2 の仕様をサポートしていないものがいくつかあり、この新しい機能の恩恵を受けることができないかもしれません。そのようなドライバの一つにプロプラエタリな nVidia 向けのXのドライバがあります。
2.7. サウンドのテーマの新しいサポート
GNOME にインストールされているいろいろなサウンドのテーマを libcanberra というライブラリで扱えるようになりました。このライブラリは Freedesktop.org の Sound Theme and Naming Specification という仕様を実装しています。これによりサウンドのテーマは従来のアイコン・テーマと同じようにインストールできるようになりました。この libcanberra ライブラリを使うことで、楽曲プレイヤーや動画プレイヤーの再生や演奏を邪魔することなくアプリケーションの警告音を鳴らすことができ、例えばフルスクリーン・モードで映画を鑑賞している時に警告音が鳴っても (何の音が鳴っているのか確かめるために再生を一時停止して) 画面モードを切り換える必要がなくなりました。
2.8. 改善されたデジタル・テレビの機能
GStreamer マルチメディア・フレームワークを採用し、GNOME 2.22 で追加されたデジタル・テレビ (DVB) の機能が動画プレイヤーにも導入されました。品質をもっと良くしようという強い決意の下に、たくさんの開発者たちが参加し複数の DBV チューナに対するサポートを追加する (すなわち、一度に複数のチャンネルを観ることが可能になる) という拡張を施した上に、トラブル発生時の診断処理も改善しました。
さらに開発者らは LIRC のフレームワークを使った赤外線リモート制御の大部分で、Zero Configuration による設定なしで「すぐに使える」(out-of-the-box) 機能のサポートを改善してきました。
さらに GNOME 2.24 の機能として、高解像度な YouTube の動画再生やその動画にリモートから字幕を入れる機能もサポートしました。
3. 新しくなったこと 〜アクセシビリティ〜
GNOME には、コンピュータを使うのに困難が伴うような障害を持つユーザや開発者を含め、誰もがソフトウェアを楽しめるようにするある種の「やさしさ」みたいなものがあります。これを支援するため、GNOME は GNOME アクセシビリティ・プロジェクトを立ち上げ、libre (自由な) デスクトップでは今や標準となったアクセシビリティ・フレームワークを開発しました。
GNOME 2.24 ではいくつかの改良点を含め、引き続きアクセシビリティの資格認定レベルを維持した状態で構築されます。
- 3.1. さらに使いやすくなったキーボード操作
- 3.2. 改善されたマウスのアクセシビリティ
- 3.3. さらに良くなったスクリーンリーダ
3.1. さらに使いやすくなったキーボード操作
GNOME 2.0 から、Control+Alt+Tab というキーの組み合わせで GNOME パネルにフォーカスを与えることができるようになっています。その後にユーザは Tab キーを使いパネルのアイテム (通知スペースにあるアイコンは除く) の間でフォーカスを移動させることができます。
GNOME 2.24 からキーボードだけを使って通知スペースのアイコンを操作できるようになっています。
キーボードによるファイル・マネージャの操作も改善されています。キーボードを使ったファイルの選択範囲は矩形ではなく線状になりした。
3.2. 改善されたマウスのアクセシビリティ
GNOME 2.22 でマウスを制御する特別なアクセシビリティ拡張が追加されましたが、GNOME 2.24 になってさらに改善されました:
- マルチヘッドの設定でマウスのアクセシビリティが動作するようになりました
- 特殊な場所でも自動クリックが利用できるようになりました (オプションで追加する自動クリック用のアプレットの上)
- ジェスチャの動きが画面上に表示されるようになりました
3.3. さらに良くなったスクリーンリーダ
GNOME プロジェクトとその関係者らは、苦心しながらも GNOME 2.24 とその他よく使われるサードパーティのアプリケーションに対するアクセシビリティとスクリーンリーダの機能を改善しました。
Java アプリ、OpenOffice.org、Mozilla Thunderbird、Pidgin、GNOME ヘルプ・ブラウザ、GNOME パネルに対して、文字を音声に変換する機能や点字デバイスのサポートが大量に改善されました。アプリケーションを切り換える場合フォーカスがあたっていないダイアログもその対象に加えることができるようになりました。
さらに ARIA (Accessible Rich Internet Applications) の機能が有効になったブラウザ (Mozilla Firefox) と GNOME のスクリーンリーダとの統合作業が始まりました。
さらにシステムで利用している言語から自動的に対応した音声を選択できるようになりました。例えばリンクを読み上げるとか、文章やオプションのチュートリアルなメッセージを真似て再生するなどがあります。
4. 新しくなったこと 〜開発者向け〜
次に示す内容は GNOME 2.24 の開発プラットフォームを利用する開発者には知っておいてもらいたい重要な変更点です。この内容に特に興味がないのであれば、このセクションを飛ばして「セクション 5 - 新しくなったこと 〜モバイル分野向け〜」をご覧下さい。
- 4.1. GLib/GTK+ 3.0 に向けて
- 4.2. GLib バージョン 2.18
- 4.3. GTK+ バージョン 2.14
- 4.4. インスタント・メッセンジャー用のライブラリ
- 4.5. デスクバー
4.1. GLib/GTK+ 3.0 に向けて
GLib と GTK+ のバージョン 3.0 に向けて作業を開始しようとしている開発者向けに、次回のリリースでは厳密な互換性を課すための「フラグ」が両ライブラリに含められる予定です。
GLib と GTK+ と ATK のバージョン 3.0 では、トップ・レベルのヘッダ・ファイルだけ (例えば glib.h とか gobject.h とか gio.h) をアプリケーションの中でインクルードするようになります。これはソースコードのレベルで互換性に影響を与えることなく、ヘッダ・ファイルを削除したりファイル名を変更したり、あるいは全体的に整理し直すことが可能になるということで、非常に重要なポイントになります。
開発者が自分たちのアプリケーションの互換性についてテストできるようにするために、コンパイル時の (エラー検出) オプションが新たに用意されました: GLib の場合は G_DISABLE_SINGLE_INCLUDES、GTK+ の場合は GTK_DISABLE_SINGLE_INCLUDES、そして ATK の場合は ATK_DISABLE_SINGLE_INCLUDES です。
アプリケーションをビルドする際に、これらのフラグ (例えば -DG_DISABLE_SINGLE_INCLUDES ) を単にコンパイラへ渡すだけで妥当なアプリケーションであることを保証してくれるようになります。
GLib と GTK+ の他に、これらに依存する各種ライブラリもコンパイル時のオプションが用意されているので、GTK+ のバージョン 3.0 との互換性についてテストする際に利用できます。
バージョン 3.0 から削除される予定の廃止 (Deprecated) になったシンボルやクラスに対して、次に示すようなフラグを指定することで、そのサポートをコンパイル時に無効にできるようになっています: ATK_DISABLE_DEPRECATED、PANGO_DISABLE_DEPRECATED、G_DISABLE_DEPRECATED、GDK_PIXBUF_DISABLE_DEPRECATED、GDK_DISABLE_DEPRECATED、GTK_DISABLE_DEPRECATED (それぞれ ATK、Pango、GLib、GdkPixbuf、GDK、GTK+ の順)
GDK_MULTIHEAD_SAFE と GTK_MULTIHEAD_SAFE のフラグを渡すことで、マルチヘッド (複数のモニタ) を正しくサポートした関数だけを利用しているかをテストできます。
4.2. GLib バージョン 2.18
GNOME 2.24 は GLib 2.18 に依存した最初の GNOME リリースです。
GLib 2.18 では C_() や NC_() マクロを使って翻訳した文字列でコンテキストを提供する機能が向上しました。さらに GIO には API が追加されました。
4.3. GTK+ バージョン 2.14
GNOME 2.24 は GTK+ 2.14 に依存した最初の GNOME リリースです。
このバージョンの GTK+ で重要な変更点は、GtkAdjustment クラスから派生した全てのウィジェット (例えばスピンボタンやスライダ) がドキュメントに示されているとおり、自分たちが表現できる値の範囲を常に [最小値、最大値 - page_size] の形式で指定しなければならなくなったということです。逆に従来どおり [最小値, 最大値] で範囲を指定したいのであれば、page_size を0にして下さい。
現在 Glade の全てのバージョン (含むバージョン 3.4.1) は GtkSpinButton、GtkHScale、GtkVScale のインスタンスに対して page_size をデフォルト 10 で生成するようになっています。page_size が妥当な値になっているかどうかを Glade ファイルを開いて確認しておく必要があります。
g_volume_mount() 関数に渡すための GtkMountOperation というクラスが新たに追加されました。この GtkMountOperation は、必要であればユーザに認証ダイアログを表示することが可能な GMountOperation クラスの一つです。
通常のアプリケーションでよく利用されるファイルや URI などを開くための汎用的なメソッドは、libgnome ライブラリに依存しない gtk_show_uri() 関数を利用できるようになりました。GDK は Startup Notification (起動通知) とフォーカス横取り防止機能を持つグラフィカルなアプリケーションを作成する際に使用する GAppLaunchContext と GdkAppLaunchContext クラスの実装が提供されました。
また、GTK+ 2.14 では新たに GtkFileChooser クラス向けの GFile ベースな API が追加されたり、XML ツリーの断片からユーザ・インタフェースを構築する機能が GtkBuilder クラスに追加されました。
4.4. インスタント・メッセンジャー用のライブラリ
新しいインスタント・メッセンジャー・クライアント (詳細は「セクション 2.1 - 連絡を取り合う」をご覧下さい) と共に、GNOME 2.24 には libempathy、libempathy-gtk、telepathy-glib といったインスタント・メッセンジャーの機能を GNOME のアプリケーションに統合する際に使用するライブラリが加わりました。
5. 新しくなったこと 〜モバイル分野向け〜
GNOME 2.24 は GNOME モバイル向け開発プラットフォームの最初のリリースでもあります。GNOME モバイルの目的は、標準的なデスクトップのいろいろなコンポーネントを一つにまとめて、ディストリビュータや PDA のメーカーが充実した開発環境を構築するのに必要なプラットフォームを提供することです。
GNOME モバイルのプラットフォームは、例えば Maemo、ACCESS Linux Platform、LiMo reference platform、Ubuntu Mobile、Moblin、そして Poky などを含め非常に多くの Linux ベースなモバイル・デバイス向けプラットフォームに対して技術的な核に相当します。
最初のリリースセットには次のものが含まれています:
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核となるインフラ
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システムのインフラ
- BlueZ — GNOME 向けのグラフィカルなユーティリティをいろいろ含み、モジュール式で一式揃い、標準に準拠した Bluetooth のスタックです。
- Evolution データ・サーバ (DBus ポーティング版) — ユーザの予定やタスク、アドレス帳に対してローカルのアクセス、またはよく利用されているネットワーク・プロトコルを介したアクセスなどを管理します。
- Telepathy — インスタント・メッセンジャーの処理や Voice & Video over IP、そしてユーザ・レベルのアプリケーションに対して Point-To-Point 式のソケット (チューブ) を提供する (API 等が) 統一されたフレームワークです。
- Avahi — ローカルのネットワーク上で zeroconf サービス・ディスカバリーを提供してくれるマルチキャスト式 DNS スタックです。
- GStreamer — かなり充実した機能を持つマルチメディア向けのフレームワークで、音声や動画の再生やストリーミングといった比較的簡単なものから、映像のキャプチャやミキシング、非線形データ変換といった複雑な機能を提供しています。
- SQLite — シンプルで、高機能なトランザクション式 SQL データベースで、アプリケーションの中に簡単に埋め込むことが可能になっています。
- GConf — 設定情報を保存したり取り出したりすることができるサービスです。
- Matchbox — デスクトップではない X11 の環境 (例えば携帯機器やセットトップ・ボックス、あるいは画面の解像度や入力方式、システムのリソースが制限されている環境) で使うウィンドウ・マネージャの一つです。
- gio と GVFS — FTP や SFTP (SSH)、WebDAV、NFS、SMB/CIFS を含むサービスをサポートする仮想ファイルシステムの API を提供しています。
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ユーザ・インタフェース
- GTK+ — 機能的に充実し、クロス・プラットフォーム対応のグラフィカル・ユーザ・インタフェースを使いやすい API として提供しているツールキットです。
- Pango — 文字列を国際化を重視しながら配置したり描画するためのサービスを GTK+ に提供しています。
- ATK (アクセシビリティ・ツールキット) — 全ての GTK+ ウィジェットでアクセシビリティの機能を利用できるようにします。これにより、アクセシビリティ専用ツールから GTK+ のアプリケーションのビューやコントロール (部品) にアクセスできるようになります。
- Cairo — ハードウェア・アクセラレーションの恩恵を受けている間、全てのメディアで一貫した出力結果を提供するように設計された 2D ベクトル・グラフィクス・ライブラリです。Cairo では PostScript に似たシンプルな API が多数用意されています。
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プログラミング言語のバインディング
GNOME モバイルのプラットフォーム・ライブラリは全てネィティブなC言語の API、あるいは他の高水準プログラミング言語に精通した開発者にもなじみ深い慣用句を使い、ライブラリの全ての機能を提供する高品質な言語バインディングを使って利用できるようになっています。現在のところ、次の言語を完全サポートしています:
- C言語
- C++言語
- Python
GNOME ではこれらのプラットフォームをサポートすると表明しました。そして Poky や Moblin、そして Ubuntu Mobile のように、GNOME モバイル 2.24 をベースにしたディストリビューションの仮想マシン向けイメージを作り、ダウンロードしたりテストできるようにする予定です。これを使って開発者は自分のプラットフォームをテストしたりアプリケーションを移植することができるようになります。
6. 国際化
GNOME 翻訳プロジェクト (GTP) のメンバーによる全世界規模的な努力のおかげで、GNOME 2.24 では 45 の言語 (最低 80% 以上翻訳済) をサポートするに至りました (訳注: ちなみに前の GNOME 2.22 では 46 の言語をサポートしていました)。この中にはユーザおよびシステム管理者向けマニュアルの翻訳も含まれます。
サポートしている言語:
- アラビア語
- アルバニア語
- イタリア語
- ウクライナ語
- エストニア語
- オランダ語
- カタロニア語
- ガリシア語
- ギリシア語
- グジャラート語
- スウェーデン語
- スペイン語
- スロベニア語
- セルビア語 (キリルとラテン)
- ゾンカ語
- タイ語
- タミル語
- チェコ語
- デンマーク語
- トルコ語
- ドイツ語
- ノルウェー・ボックマル語
- ハンガリー語
- バスク語
- パンジャブ語
- フィンランド語
- フランス語
- ブラジル系ポルトガル語
- ブルガリア語
- ヘブライ語
- ベトナム語
- ベンガル語 (インド)
- ポルトガル語
- ポーランド語
- マケドニア語
- マラーティー語
- マラーヤラム語
- リトアニア語
- ロシア語
- 中国語 (中国)
- 中国語 (台湾)
- 中国語 (香港)
- 日本語
- 英語 (アメリカ、イギリス、カナダ)
- 韓国語
この他にも多くの言語を部分的にサポート (最低 50% 以上翻訳済) しています。
GNOME を別の新しいプログラミング言語で書き直すのと同じくらいの作業規模になると思われるこの翻訳作業は、たとえ専門の翻訳チームがあったにしろ「半端のない作業」になる場合があります。今回のリリースでは6つの翻訳チームがめざましい成果を出し、結果的に彼らの言語の翻訳率が 10% 以上も上昇しました。カンナダ語、マイティリー語、マラーティー語、パシュトウ語、クロアチア語、タミル語の翻訳チームの努力に感謝します。
詳細な翻訳率とその統計データは GNOME の翻訳ステータスのサイトをご覧になってみて下さい。
7. GNOME のインストール
GNOME 2.24 に含まれる全てのソフトウェアをたった一枚の CD に収めた LiveCD を使って、最新版のデスクトップを実際に体験してみることができます。デスクトップのインストールなどの面倒な作業を行うことなく、LiveCD からお使いのコンピュータを直接起動することができます。LiveCD は GNOME の BitTorrent のサイトからダウンロードできます。
GNOME 2.24 をインストールしたりアップグレードするのであれば、お使いのベンダーまたはディストリビューションの公式パッケージをインストールすることをお勧めします。人気のあるディストリビューションであれば、すぐに GNOME 2.24 を利用できるようになるでしょうし、既に GNOME 2.24 が含まれた開発版がリリースされている場合もあります。GNOME のパッケージを配布しているディストリビュータの一覧とそのバージョンについては Get Footware のページをご覧になってみて下さい。
とはいえ、ソース・パッケージから GNOME をビルドする辛さをものともせず果敢にも挑戦してみたいという人のために、いくつかあるビルド・ツールを紹介します。GARNOME はリリースされた Tarballs (ソース・パッケージ) から GNOME をビルドするツールです。GNOME 2.24 系をビルドするのであれば GARNOME 2.24.x が必要になります。他には SVN リポジトリから GNOME の最新版をビルドする JHBuild というツールもあります。JHBuild では gnome-2.24 というモジュールセットを使って GNOME 2.24 系をビルドすることができます。
正式にリリースされた Tarballs から手動で GNOME をビルドしていくことも可能ではありますが、我々は上に挙げたツールのいずれかを使ったビルドを強くお勧めします。
8. GNOME 2.26 に向けて
GNOME の開発は、この GNOME 2.24 で終わりというわけではありません。この最新版がリリースされた後きっちり半年後には次の GNOME 2.26 をリリースできるようにするために、もう既に作業が始まっています。
GNOME ロードマップ (古いが日本語版) には次のリリース・サイクルに対する開発計画の詳細がまとめられており、GNOME 2.26 のリリース・スケジュールもまもなく公開される予定です。
9. 謝辞
このリリース・ノートは、GNOME コミュニティからの多大な助けとともに Davyd Medley 氏が編集しました。コミュニティを代表して、この GNOME 2.24 のリリースを実現した開発者と貢献者に感謝の念を捧げます。
このリリース・ノートの成果を自由に翻訳して頂いて構いません。もしあなたの言語に翻訳したいのであれば GNOME 翻訳プロジェクトまで連絡して下さい。