GNOME 3.2 リリースノート

1. はじめに

GNOME プロジェクトは、すべての人のためにすばらしいソフトウェアを作り上げるために活動する国際的なコミュニティです。GNOME は、使いやすさ、安定性、第一級の国際化、およびアクセシビリティの向上に重点的に取り組んでいます。GNOME はフリーソフトウェア・オープンソースソフトウェアです。つまり、すべての成果物は自由に使用、修正、再配布することができます。

GNOME は、6か月ごとにリリースされます。直前のバージョン 3.0 から、約 1270 のひとたちが およそ 38500 の変更を GNOME に加えました。私たちの活動に興味がありますか? Identi.caTwitter、あるいは Facebook で私たちをフォローしてください。

私たちのプロダクトの改良に協力したいとお考えなら、活動にご参加ください。英語の翻訳、マーケティングの支援、ドキュメントの執筆、テストの実施、また開発作業など行なってくれるひとを歓迎しています。

また、Friend of GNOME になって、経済面での支援をすることもできます。

3.2 リリースを他の人とも祝いたい場合は、お近くで開催されるリリースパーティをチェックしてください!

2. 新しくなったこと 〜ユーザー向け〜

2.1. 3.0 の改良

ユーザーからのフィードバックを踏まえ、GNOME 3.2 のユーザーエクスペリエンスがより洗練されたものになるよう、多くの細かい修正が加えられました。そのなかでも特筆すべきものは、次のとおりです。

  • ウィンドウのサイズ調整が簡単になりました。サイズ調整のための作業エリアが拡大されています。
  • システム設定では、他のセクションの関連する設定項目へのリンクを備えるようになりました。たとえば、キーボードのセクションにはキーボードレイアウトの設定へのリンクがあります。
  • タイトルバー、ボタン、および他のコントロールの高さが小さくなりました。小さい画面でも GNOME を使いやすくなっています。
  • 画面右下角の通知メッセージはカウンターを備えるようになりました。これにより、未読メールの数をメーラーを開かずに把握したり、特定のチャットで見逃したメッセージの数を特定したり、といったことが簡単にできるようになりました
  • 実行中のアプリケーションを示すハイライト効果が、より見やすくなりました。
  • ユーザーメニューから、チャットのステータスとは独立してメッセージ通知の設定ができるようになりました。
  • アクティビティ画面のワークスペーススイッチャーは、ワークスペースを 2 つ以上使用しているときは、フルワイド表示のままになりました。
  • ドロップダウンのカレンダーに使用するアプリケーションは、Evolution を前提とせずに、カスタマイズ可能になりました。
  • バッテリー残量は、バーで表示されるようになりました。
  • フォーカスフォローマウス の扱いが改良されました。とはいえまだまだ多くの作業が必要とされています。

ご意見、ご感想をどしどしお寄せください。

2.2. オンラインアカウント

ドキュメント、知人の連絡先、カレンダー — こういった種類の情報はローカルのコンピューターに保存されることもありますが、オンライン上に保存するのがますますポピュラーになっています。GNOME 3.2 では、オンラインアカウントを使って、こういったオンライン上の情報源を一元管理することができます。ドロップダウンのカレンダーと同じように、GNOME DocumentsGNOME ContactsEmpathyEvolution によるこれらオンライン上のアカウントの利用を自動化することができるようになります。

図 1オンラインアカウント

2.3. ウェブアプリケーション

アプリケーションのように使われている Web サイトがあります。コンピューターを起動してすぐに開き、そしてそれを開きっぱなしにし、定期的にチェックするサイトがあります。もし GNOME がこのようなサイトを本当のアプリケーションのように扱うことができれば素敵ではないでしょうか?

GNOME 3.2 では、Epiphany (GNOME 標準のウェブブラウザー) を使えばウェブサイトをひとつのアプリケーションとして使用することができます。この機能を利用するには、Ctrl-Shift-A キーを押すか、ファイルメニューから Save as Web Application を選択します。ウェブアプリケーションとして保存すれば、アクティビティ画面からそれを起動できるようになります。

図 2ウェブアプリケーションとしてのマイクロブログ

以下は、この機能の利点を簡単にまとめたものです。

  • ウェブアプリケーションをアクティビティ画面から簡単に起動できます。お気に入りに登録することも可能です。
  • ウィンドウの領域全体をそのサイトに割り当てて使用できます。
  • アプリケーションとして使用できるものは、保存したサイトに制限されます。リンクのクリックなどにより、どこか他のサイトへ移動しようとすれば、通常のブラウザーのウィンドウで開かれます。
  • ウィンドウの切り替えやウェブアプリケーションの起動に使われるアイコンには、サイトのロゴや、サイトの画面の一部が使用されます。
  • ウェブアプリケーションは、通常のブラウザーとは独立しています。メインのブラウザーがクラッシュしても、ウェブアプリケーションはその影響を受けません。

2.4. 知人の連絡先の管理

GNOME Contacts は人とのつながりにポイントを当てた、新しいアプリケーションです。知り合いの連絡先が、オンライン上に保存されているか、Evolutionや、チャットアプリケーションの Empathy に保存されているかを問わず、人とのつながりの全貌を把握できるようにすることがこのアプリケーションの目標です。

図 3連絡先管理アプリケーション

2.5. ドキュメントとファイルの管理

たくさんのドキュメントを扱う場合、それらを管理しておくのは面倒になりがちです。GNOME 3.2 では、より簡単になるような手順を踏みます。

2.5.1. 役立つファイルのオープン・保存ダイアログ

ファイルのオープンや保存がより簡単になりました。アプリケーションで何かファイルを開くときに、すぐにファイルを開けるように、最近開いたファイルの一覧が表示されます。同じように、ファイルを保存するときは、最近使ったディレクトリの一覧を表示します。

図 4ファイルの保存ダイアログの最近使用したディレクトリ

2.5.2. ドキュメントアプリケーション

GNOME 3.2 において、GNOME Documents は、ドキュメントの検索、整理、表示をシンプルかつ効率的に行う手段を提供できるよう注力しています。

図 5新規アプリケーション GNOME Documents

オンラインアカウントとの統合により、ローカル/オンラインを問わず、ドキュメントの検索が同じようにできるようになりました。

図 6オンラインのドキュメントを表示する GNOME Documents

2.6. ファイルマネージャーからファイルをすばやくプレビューする

ファイルマネージャー で、ムービーや音楽、写真、およびその他のファイルをすばやくプレビュー表示できます。プレビューの表示/非表示は、スペースバーで切り替えます。

図 7GNOME 3 リリースパーティの写真のクイックプレビュー

2.7. 大きな統合

2.7.1. カラーマネージメント

色の表示方法の違いにより、同じ写真でもモニターが違えば見え方も異なります。同じように、写真を印刷するときも、色に違いが生じます。

GNOME 3.2 では、デバイスをキャリブレーションして、色の表示を実際に近づけることができるようになりました。

図 8システム設定のカラーマネージメント

2.7.2. 組み込みのメッセージング機能

チャットにサインインするのと、メッセージングサービスを利用するのとで、それぞれ別のアプリケーションを起動する必要はなくなりました。3.2 では、GNOME がその役目を担ってくれます。

  • 画面右上角のユーザーメニューから、在席中かオフラインか状態をすばやく切り替えられます。
  • 新しい相手からのリクエストや、音声/映像での呼び出し、ファイル転送などの受け入れ/拒否を簡単に行うことができます。
  • チャットやメッセージングサービスの接続に問題がある場合は、通知がなされます。

2.7.3. ワコム グラフィックタブレット

ワコム グラフィックタブレットの設定をシステム設定から行うことができます。

2.7.4. ログイン画面

GNOME 3 のログイン画面は、他のユーザーエクスペリエンスと統一されるようになりました。

図 9ログイン画面

2.7.5. タッチスクリーンデバイス

タブレットや同種のタッチスクリーンデバイスでは、デバイスを回転すると自動的に画面も回転します。また、タッチスクリーンデバイスでは、マウスを接続しない限りマウスカーソルは表示されません。

2.7.6. メディアのホットプラグ

GNOME 3 には、メディアのホットプラグ通知の機能が統合されました。

図 10ホットプラグ通知

2.7.7. 知人の連絡先の検索

アクティビティ画面の検索ボックスから知人の連絡先を検索できます。

図 11アクティビティ画面での連絡先の検索

2.8. 本当に助けとなるドキュメント

従来のユーザードキュメントは、良い話であるが非常に長く、通読するのに時間がかかる紙の本のように書かれています。これは、あるタスクを行なう方法を手早く見つけ出したいのであれば、理想的ではありません。この取り組みで、以下のアプリケーションはトピック指向のドキュメンテーションを含むようになりました:

  • アクセシビリティの探索を行う Accerciser
  • 統合開発環境 Anjuta
  • CDやDVDの書き込みアプリケーション Brasero
  • ウェブカメラアプリケーション Cheese
  • 画像ビューアー Eye of GNOME
  • メール/カレンダーアプリケーション Evolution
  • リモートデスクトップビューアー Vinagre

また、Desktop Help にも大きな改良と機能強化を行いました。

2.9. いっそう美しく

3.2 では、外観を洗練させる変更が多く加えられ、今までよりもいっそう美しくなりました。これは、GTK+ における CSS サポートの成果がなければ実現できなかったでしょう。変更内容については、開発者向けセクションの セクション 4.2 - GTK+ 3.2 をご覧ください。

次の点で洗練さを増しています。

  • ダークテーマ: メディアアプリケーションでは、固有のダークテーマが使われるようになっています。このテーマは、ムービープレイヤー画像ビューアーで使用されています。
  • ウィンドウの角は、アンチエイリアス処理によりなめらかになりました。
  • チャットのメッセージ通知は、より視覚的に心地良いものになりました。
  • ネットワークダイアログなどさまざまなダイアログが、GNOME Shell のスタイルと適合する外観を持つようになりました。
  • 細かい部分にも様々なビジュアル面での改良があります。たとえば、ボタンラベルの影や、インラインツールバーや盛り上がって見えるボタンスタイル、および押された状態のボタンの改良などがあります。さらに、フォーカスを示す矩形は、キーボードを使ってアプリケーションを操作する場合にだけ表示されるようになりました。

2.10. ちょっと待って、まだまだあります…

大きな変更だけでなく、いろいろなちょっとした機能追加や調整が、どのリリースの GNOME にも見られます。

  • Apple Filing Protocol (AFP) で共有されたドキュメントのアクセス・修正機能

  • 動画プレイヤー で動画を回転するプラグインが追加されました。写真用のカメラやスマートフォンなどで録画された、縦横の方向が間違っている動画に使えます。

  • 暗号と認証の改良:

  • Empathy の以前の会話にかんするログビューアーは、よりすっきりしたデザインになりました。また、Empathy は SMS メッセージの送信もサポートし、SIP アカウントには PSTN 通話が可能かのマーク付けもできるようになりました。

    図 12Empathy ログビューアー
  • NetworkManager バージョン 0.9 は、すばやいユーザー切り替え、改良された WiFi ローミング、WiMAX のサポート、柔軟な承認、およびネットワーク接続情報の集中化などの機能を提供します。

  • Evolution は、Google のアドレス帳に保存した連絡先の画像を表示できるようになりました。さらに、メールサーバーのポート番号が設定できることを明確にするために、個別のフィールドを追加しました。

  • テキストエディターの Gedit では、Mallard や Markdown ファイル向けの新しいスニペットが利用可能になり、クイックオープンや検索のダイアログも一新されました。

  • さまざまなパフォーマンスの改善。フルスクリーンの 3D ゲームに関する改善は特に注目に値します。

  • システム設定の地域パネルでの地域設定機能。

  • 再設計されたフォント選択ダイアログ。

    図 13新しいフォント選択 (Gedit)

3. 新しくなったこと 〜アクセシビリティ〜

GNOME 3.2 は今までで最も美しいアクセシビリティ機能の優れたデスクトップです。あらゆる人にとっての信頼性と使いやすさが強化されています。

GNOME 3.2 までは、支援技術のユーザーは不運な困難に直面していました。コンピューターを使用している最中にアクセシビリティ機能の支援を有効化することは不可能でした。AT-SPI2 の改良のおかげで、アクセシビリティ機能が有効になっているかどうかを、デスクトップに依存しないかたちで判定することができ、さらにその機能を有効にすることもできます。GNOME はこれを実現した初めてのデスクトップであり、真にデスクトップに依存することなくこの機能が動作するよう、ますます多くの作業が求められています。

他の改良点としては次のものがあります。

  • オンスクリーンキーボードを必要とするユーザー向けに、新しいキーボードが搭載されました。

    図 14オンスクリーンキーボード
  • アクティビティ画面は、キーボードによる操作がしやすくなりました。キーボードによる完全な操作を実現し、さらにスクリーンリーダー Orca のユーザーはナビゲーション中に、ずっと信頼性の高く正確なプレゼンテーションを体験できます。

  • Orca の introspection への移行により、GNOME のスクリーンリーダーの動作は非常に軽量になりました。今では ATK ブリッジは、支援技術が使用される際のシグナルを listen するだけでよく、GNOME のアクセシビリティ機能サポートは、性能低下をもたらさなくなりました。

  • アクセシビリティ・サービス・インターフェースの AT-SPI2 は安定性が大きく強化されました。クラッシュ、メモリリーク、またその他いろいろなバグが修正されました。

  • GNOME のアクセシビリティ実装ライブラリ Gail は、GTK+ に完全にマージされました。GNOME は、添えつけではない、組み込みのアクセシビリティにもう一歩近づきました。

4. 新しくなったこと 〜開発者向け〜

以下の変更はGNOME3.2開発者プラットフォームで利用する開発者向けで重要なものです。開発者向けの変更に興味がない場合、セクション 5 - 国際化へ読み進めることができます。

GNOME 3.2 に含まれるものが、GNOME 開発者プラットフォームの最新リリースとなります。これは、クロスプラットフォームのアプリケーション開発で使用することができる、GNU LGPLの下で利用可能なAPI-stableとABI-stableのライブラリの一群から構成されています。

GNOMEでの開発のもっと詳しい情報は、GNOME Developer Center で手に入ります。

4.1. GLib 2.30

GNOME の低レベルなユーティリティライブラリである GLib にさまざまな改良が加えられました。

  • GApplication は非ユニークなアプリケーションに使用できるようになりました。
  • GLib は、Unix-specific API 用に別個のヘッダー (glib-unix.h) をインストールするようになりました。とりわけ、それは Unix シグナル用のメインループのソースを提供します。
  • GDBus は 多くの新インターフェースで 'object manager' パターンをサポートします。
  • GDBus にはコードジェネレーターが設けられました: gdbus-codegen
  • アトミック操作が gcc ビルトイン関数を利用して書き換えられました。明示的キャストをともなった呼び出しで問題が生じる可能性があります。
  • ポインターサイズのロケーションにおけるビットロックなど、ポインターに対するアトミック操作が追加されました。
  • 単位ポリシーが変更され、SI 単位系を使用するようになりました。g_format_size_for_display は非推奨となり、代わりに g_format_size を使用してください。
  • HMAC ダイジェストのサポートが追加されました: GHmac
  • 証明書および鍵を調べるインターフェースが追加されました: GTlsDatabase 。glib-networking によって実装されています。

4.2. GTK+ 3.2

GTK+ 3.2 は GTK+ ツールキットの最新リリースであり、GNOME の核になるものです。GTK+ 3.2 には、多くのバグフィックスに加え、開発者向けの新機能が設けられています。

  • Entry はヒントを持つことができるようになりました。gtk_entry_set_placeholder_text を参照してください。
  • 多くのウィジェットで、height-for-width 配置管理がサポートされました。ラベルの合理的なサイズ設定やウィンドウサイズのチェックが重要になります。
  • 新しいウィジェット:
    • GtkLockButton: 特権的な操作を行うときに使用されます。control-center のパネルのいくつかで使用されています。
    • GtkOverlay: コンテンツ領域のフローティングコントロールです。ウェブブラウザーで使用されています。
    • GtkFontChooserDialog: 新しいフォント選択ダイアログです。
  • メインおよびインラインツールバー向けのスタイルクラスなど、CSS テーマサポートが大きく改良されました。
  • HTML バックエンドの Broadway (WebSocket を使用してブラウザー中でレンダリングを行います) は、改良が加えられましたが、まだ実験的な段階です。この機能によって、将来的にアプリケーションをお使いのサーバーで実行してどこからでもアクセスできるようにしたり、あるいは、アプリケーションをパブリックなサーバーに配置してユーザーごとにアプリケーションのインスタンスを生成したりすることができるようになります。この機能は、GTK+ を --enable-x11-backend --enable-broadway-backend 指定でコンパイルし、実行時に環境変数 GDK_BACKEND を使用する必要があることにご注意ください。
  • reftests のサポートが追加され、テストケースを書くのがより簡単になりました。
  • キャッシュサイズ要求や、CSS スタイル情報の読み込み、およびウィジェットサイズの計算など、さまざまな面で GTK+ の性能改善が盛り込まれました。

4.3. Clutter 1.8

ハードウェアアクセラレーションを活用したユーザーインターフェース向けの GNOME グラフィックライブラリの Clutter には、次の改良が加えられました。

  • 次のような新しいアクション。ジェスチャー認識システムを記述するための ClutterGestureAction、スワイプジェスチャーを検出するための ClutterSwipeActionClutterDragAction 使用時にアクターをドロップのターゲットとする ClutterDropAction、および ClutterClickAction の長押しサポート。
  • ClutterState の状態遷移は、ClutterScript におけるシーン作成時にオブジェクトシグナルに結び付けられるようになりました。
  • Cairo の描画インテグレーション が改良されました。
  • Clutter で使用される GPU プログラミングインターフェースの Cogl は、独立したライブラリとして公開されています。

4.4. 廃止予定のライブラリの使用について

古びた技術をより優れたものに置き換える継続した取り組みが、いっそうの進展を見せました。

  • GConf はデフォルトで D-Bus を使うようになっており、もはや ORBit2 を要求しません。その結果、非推奨のライブラリの ORBit2libIDL は、GNOME から取り除かれました。
  • GNOME の core モジュールは、introspection ベースの Python バインディング (pygobject-3) にのみ依存するようになり、それにより pygtkgnome-python、および gnome-python-desktop は要求されなくなりました。
  • いくつかのアプリケーション (たとえば AccerciserDasherGHex、グラフィカルデバッガー Nemiver、およびパスワード・暗号化鍵管理ツール Seahorse は、GConfの代わりのストレージバックエンドとして GSettings を使うようになりました。
  • Epiphany ウェブブラウザーなど、いくつかのパッケージは、dbus-glib から GDBus への移行、libunique から G(tk)Application への移行を済ませました。

4.5. JHBuild による GNOME のコンパイルがより簡単に

GNOME ビルドツールの JHBuild は、お使いのシステムにインストールされたモジュールのバージョンが十分に新しければ、そのモジュールをビルドしないようになりました。この機能は、設定オプションの partial_build で制御でき、デフォルトで有効になっています。jhbuild sysdeps コマンドを実行すると、ビルド対象のモジュールに加え、インストール済みのシステムモジュールも一覧表示されます。

最近のディストリビューションにおいてスクラッチで GNOME のビルドを開始する場合、この機能によって、コンパイル対象のモジュールのうち 50 ほどのモジュールのビルドを省略することができます。

4.6. その他の開発者向けアップデート

GNOME 3.2 で加えられた、その他のプラットフォームの改良は次のとおりです。

  • 旧来の (静的な) Python バインディングは、PyGObject 3.0 で捨て去られ、(introspection を利用した) 動的なバインディングのみが提供されます。PyGObject 2 パッケージでは、introspection がデフォルトで無効になっているので、PyGObject 2 と 3 とは同時にインストールすることが可能です。アプリケーションを PyGObject 2 から 3 へ移行する方法にかんする情報が入手可能です。
  • Tracker バージョン 0.12 は次のものをサポートします。Firefox ≥ 4.0、Thunderbird ≥ 5.0、MeeGoTouch、いくつかの追加 SPARQL パラメーター、EPub ファイルからの情報抽出、および desktop ファイルにたいするローカルの XDG ディレクトリ。
  • NetworkManager バージョン 0.9 は、introspection のサポートと、簡略化された D-Bus API を提供します。アプリケーションを NetworkManager 0.8 から 0.9 へ移行する方法にかんする情報が入手可能です。
  • 暗号ライブラリ間のグルーとして PKCS#11 を使用、促進する前述の取り組みの一部として、gnome-keyring のさまざまなパーツがデスクトップ独立のライブラリに分割されました。
  • GtkSourceView は Markdown と Standard ML のシンタックスハイライトをサポートしました。
  • Evolution-Data-Server のたくさんの introspection サポートが Fix されました。
  • libfolks は Evolution-Data-Server のバックエンドを含むようになりました。これは、新アプリケーション GNOME Contacts でも使用されています。
  • ドキュメンテーション処理ツールの gnome-doc-utilsxml2po はそれぞれ、徐々にyelp-toolsitstool に置き換えられています。yelp-xsl には、条件処理や動的グロッサリーなどの実験的な Mallard の拡張機能が少し含まれます。

5. 国際化

世界中の GNOME 翻訳プロジェクトのメンバーのおかげで、GNOME 3.2 では 50 を超える言語でのサポートを提供しており、それぞれの言語は少なくとも 80 パーセントのメッセージの翻訳を達成しています。ユーザー向け、管理者向けドキュメントなど多くの言語に翻訳されています。

サポートしている言語:

  • アストゥリアス語
  • アッサム語
  • アラビア語
  • イギリス英語
  • イタリア語
  • インドネシア語
  • ウイグル語
  • ウクライナ語
  • エストニア語
  • オランダ語
  • カタロニア語
  • カタロニア語 (バレンシア)
  • ガリシア語
  • ギリシア語
  • グジャラート語
  • スウェーデン語
  • スペイン語
  • スロベニア語
  • セルビア語
  • セルビア語 (ラテン文字)
  • タイ語
  • タミル語
  • チェコ語
  • デンマーク語
  • トルコ語
  • ドイツ語
  • ノルウェー語 (ブークモール)
  • ハンガリー語
  • バスク語
  • パンジャブ語
  • ヒンディー語
  • フィンランド語
  • フランス語
  • ブラジル系ポルトガル語
  • ブルガリア語
  • ヘブライ語
  • ベトナム語
  • ポルトガル語
  • ポーランド語
  • ラトビア語
  • リトアニア語
  • ルーマニア語
  • ロシア語
  • 中国語 (中国)
  • 中国語 (台湾)
  • 中国語 (香港)
  • 日本語
  • 韓国語

他の多くの言語は部分的にサポートされています。それらの言語ではメッセージの半分以上が翻訳済みです。

翻訳状況に関する詳細な統計や、あなたの言語で GNOME を使えるようにする活動への協力方法について、あるいはその他さまざまな情報については、GNOME の翻訳ステータスのサイトをご覧ください。

6. GNOME 3.2 の入手

GNOME 3.2 をお使いのコンピューターにインストール、またはアップグレードする場合、ご利用のベンダーやディストリビューションが公式に提供するパッケージをインストールすることをお勧めします。人気のあるディストリビューションでは、すぐに GNOME 3.2 が利用可能になるでしょう。開発版において GNOME 3.2 がすでに利用できるディストリビューションもあります。

GNOME を試してみる場合、Live イメージをダウンロードしてください。Getting GNOME のページから取得できます。

もしあなたが勇敢で忍耐強く、かつ GNOME をソースからビルドしたいというのであれば、JHBuild の使用をお勧めします。JHBuild は、Git リポジトリから GNOME の最新版をビルドするためのツールです。JHBuild を使えば gnome-3.2 用のモジュールセットを利用して GNOME 3.2.x をビルドすることができます。

7. GNOME 3.4 に向けて

GNOME 3 シリーズの次のリリースは 2012年の4月に予定されています。3.4 では多くの新機能の追加や機能強化が計画されています。

7.1. ユーザー側から見た変更

  • “マウスへのフォーカスの追従”や、簡単に複数のアプリケーションを同時に起動させたりなど、GNOME3を進化させる継続的な作業。
  • インストールの改良として、tweaksや調整、機能強化を提供するGNOME Shell拡張の有効/無効を指定。
  • IBusのさらなる統合で、キーボードで直接入力できないいくつかの文字や記号を簡単に入力。
  • libsocialwebによるソーシャルネットワークの統合。
  • ユーザーに通話中に利用するウェブカメラとマイクを選択することやビデオのプレビューを動かすこと、そしてビデオ画面のサポートも含む予定であるEmpathyのユーザー呼び出しインターフェースの新しい設計。
  • systemd利用時の自動的な multi-seat サポート。
  • GtkHtmlの代わりにWebKitを利用したEvolutionにおけるHTMLメッセージのレンダリング改良。

7.2. アクセシビリティの変更

  • 広範囲な記号やハイコントラストのアイコンに取り組んでいます。これらのアイコンは新しいアクセシビリティツールや、完全なハイコントラストもしくはハイコントラストを逆転したテーマで有効になります。
  • 明るさとコントラストのカスタマイズの追加オプションと共に、カーソルとフォーカスの追跡を含んだGNOME Shell拡大鏡のさらなる強化。
  • 今まで利用していたGNOME Shellのアクセシビリティおよびアクセシビリティツールの継続的な作業。

7.3. 開発者に関連した変更

  • プラットフォームの継続的なクリーンアップ (たとえばdbus-gliblibuniqueからGDBus/G(tk)Applicationへの移動や、Evolution-Data-ServerのストレージバックエンドをGconfからGSettingsへ移行)。
  • ソースコードの tarball は、.xz圧縮メソッドを使用したものだけが利用できるようになります。

8. 謝辞

このリリースはGNOME コミュニティの多大で献身的な働きなしには達成できませんでした。みなさんに祝福と感謝を捧げます。

このリリースノートはどんな言語にでも自由に翻訳して頂いて構いません。もしあなたの言語に翻訳したいのであればGNOME 翻訳プロジェクトまで連絡してください。

この文書は Creative Commons Sharealike 3.0 license のもとで提供されています。Copyright © The GNOME Project

GNOME コミュニティの助けのもと、Olav Vitters、André Klapper、Allan Day が編集しました。翻訳は日本語翻訳チームの過去の翻訳成果 (翻訳者は佐藤暁、相花毅、草野貴之、松澤二郎、赤星柔充、西堀清貴、OKANO Takayoshi) をベースに、草野 貴之 および、OKANO Takayoshi、赤星 柔充、松澤 二郎が行いました。