3.20の他の改良点

GNOME 3.20 には、他にも新機能や改良点がたくさんあります。ソフトウェアアプリのレビュー機能や、地図アプリおよび Web の改良、UI フォントの改善などです。

ソフトウェアアプリにレビュー機能を搭載

ソフトウェアアプリでは、提供されているアプリケーションに対する他の人の意見を参照できるようになりました。各レビューではアプリケーションに対して星の数で評価を与え、アプリケーションごとに評価の平均点が表示されます。これにより、アプリケーションの評判を一目で把握することができます。最も関連性が高く有用だとみなされたレビューはトップに表示されます。レビューが参考になったときは、レビュー自体の評価を上げることができます。

もちろん、自分のレビューを投稿することも可能で、使用したアプリに対する自分の意見を人に伝えることができます。有益なレビューは、他のユーザーにとってアプリケーションの体験を向上させる良いきっかけとなるでしょう。

ロケーションサービス制御の強化

ロケーションサービスを利用すると、アプリケーションがユーザーの現在地を把握できるようになります。これ自体は非常に便利な機能ですが、その一方で、今いる場所を第三者に知られたくない場合などプライバシー上の課題も抱えています。そのため、ロケーションサービスを無効にしてアプリケーションが現在地を特定できないようにする設定は以前から可能でした。3.20 では、このプライバシー制御を強化して、より頑強に、より細やかな制御ができるようになっています。

最新バージョンでは、ロケーションサービスのアクセス許可をアプリケーションごとに指定できるようになりました。各アプリケーションが、ロケーションサービスに初めてアクセスする際は、ユーザーに問い合わせて許可を得る必要があります。また、プライバシー設定から、アプリケーションごとにロケーションサービスの使用許可設定をいつでも変更できます。

この新しいプライバシー制御機能では、アプリケーションがロケーションデータにアクセスする理由をユーザーに提供することができます。これにより、アプリケーションの挙動を把握しやすくなります。ロケーションサービスを使用中のときは、従来通り、トップバーにインジケーターが表示されます。

Web ブラウザーの強化

Web (GNOME Web ブラウザー) には、多くの細かな改良だけでなく、大きな新機能が 3.20 で導入しました。ダウンロードの状況をポップオーバーで表示し、ヘッダーバーからアクセスできるようになりました。この変更により、ダウンロード表示がブラウジングの邪魔にならなくなりました。また、以前のダウンロード履歴も簡単に参照することができます。

セッションリストア機能も、今回の主要な新機能です。以前のバージョンから、Web の再起動時には以前のタブを再オープンしていましたが、一部の情報が十分に復元できていませんでした。今回の変更では、タブごとの閲覧履歴やスクロール位置などの情報も含めて正確にタブを復元できるようになります。起動時は常にまっさらな画面から使用したいという場合は、設定でこの機能を無効化することができます。

他にも、Web の変更点として次のようなものがあります。

  • HTTPSを使用していないサイトにアクセスしたときのフィードバックを改善しました。

  • リンクを新しいタブで開いたときに閲覧履歴を継承します (これは、以前のバージョンで失われた機能を復活させたものです)

  • Cookie ダイアログに検索機能を搭載しました。

  • WebGL と Web Audio による、ウェブベースの高度なグラフィックとオーディオをサポートしました。

地図アプリに編集、印刷、インポート機能を

新バージョンの地図アプリには、多くの改良が盛り込まれています。特に重要な変更点には以下のものがあります。

  • OpenStreetMap の場所情報を追加、編集できるようになりました。

  • 場所のポップオーバーには、ウェブサイトや電話番号など詳細な情報を含めるようにしました。この情報は、場所のポップオーバーを展開することで表示できます。

  • カスタムレイヤー機能により、地図レイヤーを追加することができます。GeoJSONやKML、GPXなどの共通的な地図ファイルフォーマットを使用します。地図レイヤーとしては、行政区画表示用、イベントの重要なポイントを示すもの、環境データ提示用など様々なものがオンラインで入手できます。この機能を使えば、モバイルデバイスや Google から自分のルートデータを表示することも可能です。

  • 目的地までの経路情報を印刷することができます。経路情報は、途中の地図画像や経路指示とともに分かりやすくまとめています。

  • 地図画像を PNG 形式で生成できるようになりました。この機能は、地図画像をドキュメントやウェブサイトに掲載したり、他の人と共有したりするときに便利です。

他にも細かなの改良点として次のものがあります。

  • 縮尺ルーラーを新しく地図上に表示します。

  • 起動時に、最後に参照した位置を表示するようになりました。同じ場所まで戻ってくる手間がなくなりました。

  • “geo:”プレフィックス付きのロケーションリンクを開くことができます。

  • 環状交差点について、進行方向など情報を充実させました。

洗練さを増したフォント

Cantarell (デフォルトの GNOME フォント) は、3.20 で多くの改良があります。全体的に、文字の概観を大幅に改善し、どんなサイズでも調和的かつ統一のとれた概観になるようにしました。また、カバー範囲を拡張して、サポートする文字集合を追加しました。ベトナム文字、キリル文字、デーヴァナーガリ文字に加え、その他の記号文字などを追加でサポートしています。

多くの文字を手直ししました。たとえば、描画の統一性を確保したキリル文字や、アイスランド語の特殊な文字などです。

マウス、タッチパッド設定のデザインを一新

マウスとタッチパッドの設定画面を作り直し、より分かりやすく現代的な概観に仕上げました。新デザインでは、設定したい項目をすぐに見つけられるようになっています。たとえば、タッチパッド設定は、タッチパッドを接続しているときだけ表示するようにしています。また、設定項目の説明も充実させ、ナチュラルスクロールや主ボタンの設定など分かりやすくなっています。

今回の変更の一環として、ダブルクリック間隔の設定は、ユニバーサルアクセス設定に移動しました。

dconf エディターの改良

dconf エディターを 3.20 で改良しました。設定リストを一新して、全体を把握しやすくし、各行に設定内容の説明を加えました。検索 UI は、他の GNOME アプリケーションで統一的に使われているデザインを採用し、設定を見つけやすくしました。また、検索機能はキー入力するだけで使用できます。

また、新機能もたくさん盛り込まれています。ブックマーク機能を搭載し、よく使う設定項目に簡単にアクセスできるようにしました。また、"デフォルト値を使用する" スイッチでは、カスタマイズした設定値を切り替えることができます。他にも、現在のパスのコピー機能、表示しているキーのリセット機能など、便利な機能が追加されています。

レトロなアーケードゲームの楽しみ

Nibbles が今回のリリースで大きく様変わりしました! 新バージョンでは、アートワークを更新し、楽しさを倍増させるレトロなアーケードスタイルを採用しました。残ライフを示す小さなイモ虫アイコンも今回の変更点です。新しい画面を採用してハイスコアランキングをうまく統合させることで、ゲームはより直感的かつ夢中になれるものに仕上がりました。

細かな変更点

いつもどおり、他にも細かな改良点が今回のリリースにはたくさんあります。いくつかをご紹介します。

  • キーボード上のキーによる、機内モード、Wi-Fi、および Bluetooth の切り替えができるようになりました。また、各機能を使用しているときの視覚的なフィードバックもわかりやすく表示するようにしました。

  • カレンダーアプリのイベント追加ポップオーバーでは、イベントを追加するカレンダーを選択できるようになりました。

  • Wi-Fi アクセスポイントをスキャンするときに、お使いのコンピューターの MAC アドレスをランダムにマスクします。

  • To Do アプリでは、スケジュールビューのタスクを日付ごとにグループ化しました。プラグインシステムを導入し、オンラインタスクマネージャーに接続できるようになります。

  • ソフトウェアアプリは、画面スペースを有効活用するように改良しました。ランディングページのアプリケーション数は増加しており、画面領域を効率的に活用しています。あわせて、インストール済み、更新、カテゴリの各ビューは大きな画面でより見やすくなっています。

  • チェックボックスとラジオボタンに、選択時のちょっとしたアニメーションを追加しました。

  • バッテリー容量をトップバーに表示するオプションを追加しました。このオプションは、dconf エディターから org ‣ gnome ‣ desktop ‣ interface ‣ show-battery-percentage で設定できます。

  • オーディオデバイス (ヘッドセットや、ヘッドフォン、マイクなど) を接続したが機器の種類を自動で認識できない場合に、デバイスの種類をユーザーに問い合わせることができるようになりました。これにより、ヘッドセットやマイクを使用するときに Dell のコンピューターの多くで発生した問題を防止できるようになります。

  • ドキュメントアプリは、作者順、日付順、タイトル順にドキュメントをリストアップできるようになりました。またビューにアイテムが無い場合の見た目を改善しました。

  • 設定アプリでは、プリンタージョブのダイアログを更新し、より見やすく現代的なスタイルを採用しました。

  • Boxes (仮想マシンやリモートマシンを使用するための GNOME アプリケーション) は、仮想マシン作成後に自動でスナップショットを作成するようになりました。これにより、仮想マシンを簡単に元の状態に戻せるようになります。