新しくなったこと 〜ユーザー向け〜

2.1. 3.0 の改良

ユーザーからのフィードバックを踏まえ、GNOME 3.2 のユーザーエクスペリエンスがより洗練されたものになるよう、多くの細かい修正が加えられました。そのなかでも特筆すべきものは、次のとおりです。

  • ウィンドウのサイズ調整が簡単になりました。サイズ調整のための作業エリアが拡大されています。
  • システム設定では、他のセクションの関連する設定項目へのリンクを備えるようになりました。たとえば、キーボードのセクションにはキーボードレイアウトの設定へのリンクがあります。
  • タイトルバー、ボタン、および他のコントロールの高さが小さくなりました。小さい画面でも GNOME を使いやすくなっています。
  • 画面右下角の通知メッセージはカウンターを備えるようになりました。これにより、未読メールの数をメーラーを開かずに把握したり、特定のチャットで見逃したメッセージの数を特定したり、といったことが簡単にできるようになりました
  • 実行中のアプリケーションを示すハイライト効果が、より見やすくなりました。
  • ユーザーメニューから、チャットのステータスとは独立してメッセージ通知の設定ができるようになりました。
  • アクティビティ画面のワークスペーススイッチャーは、ワークスペースを 2 つ以上使用しているときは、フルワイド表示のままになりました。
  • ドロップダウンのカレンダーに使用するアプリケーションは、Evolution を前提とせずに、カスタマイズ可能になりました。
  • バッテリー残量は、バーで表示されるようになりました。
  • フォーカスフォローマウス の扱いが改良されました。とはいえまだまだ多くの作業が必要とされています。

ご意見、ご感想をどしどしお寄せください。

2.2. オンラインアカウント

ドキュメント、知人の連絡先、カレンダー — こういった種類の情報はローカルのコンピューターに保存されることもありますが、オンライン上に保存するのがますますポピュラーになっています。GNOME 3.2 では、オンラインアカウントを使って、こういったオンライン上の情報源を一元管理することができます。ドロップダウンのカレンダーと同じように、GNOME DocumentsGNOME ContactsEmpathyEvolution によるこれらオンライン上のアカウントの利用を自動化することができるようになります。

図 1オンラインアカウント

2.3. ウェブアプリケーション

アプリケーションのように使われている Web サイトがあります。コンピューターを起動してすぐに開き、そしてそれを開きっぱなしにし、定期的にチェックするサイトがあります。もし GNOME がこのようなサイトを本当のアプリケーションのように扱うことができれば素敵ではないでしょうか?

GNOME 3.2 では、Epiphany (GNOME 標準のウェブブラウザー) を使えばウェブサイトをひとつのアプリケーションとして使用することができます。この機能を利用するには、Ctrl-Shift-A キーを押すか、ファイルメニューから Save as Web Application を選択します。ウェブアプリケーションとして保存すれば、アクティビティ画面からそれを起動できるようになります。

図 2ウェブアプリケーションとしてのマイクロブログ

以下は、この機能の利点を簡単にまとめたものです。

  • ウェブアプリケーションをアクティビティ画面から簡単に起動できます。お気に入りに登録することも可能です。
  • ウィンドウの領域全体をそのサイトに割り当てて使用できます。
  • アプリケーションとして使用できるものは、保存したサイトに制限されます。リンクのクリックなどにより、どこか他のサイトへ移動しようとすれば、通常のブラウザーのウィンドウで開かれます。
  • ウィンドウの切り替えやウェブアプリケーションの起動に使われるアイコンには、サイトのロゴや、サイトの画面の一部が使用されます。
  • ウェブアプリケーションは、通常のブラウザーとは独立しています。メインのブラウザーがクラッシュしても、ウェブアプリケーションはその影響を受けません。

2.4. 知人の連絡先の管理

GNOME Contacts は人とのつながりにポイントを当てた、新しいアプリケーションです。知り合いの連絡先が、オンライン上に保存されているか、Evolutionや、チャットアプリケーションの Empathy に保存されているかを問わず、人とのつながりの全貌を把握できるようにすることがこのアプリケーションの目標です。

図 3連絡先管理アプリケーション

2.5. ドキュメントとファイルの管理

たくさんのドキュメントを扱う場合、それらを管理しておくのは面倒になりがちです。GNOME 3.2 では、より簡単になるような手順を踏みます。

2.5.1. 役立つファイルのオープン・保存ダイアログ

ファイルのオープンや保存がより簡単になりました。アプリケーションで何かファイルを開くときに、すぐにファイルを開けるように、最近開いたファイルの一覧が表示されます。同じように、ファイルを保存するときは、最近使ったディレクトリの一覧を表示します。

図 4ファイルの保存ダイアログの最近使用したディレクトリ

2.5.2. ドキュメントアプリケーション

GNOME 3.2 において、GNOME Documents は、ドキュメントの検索、整理、表示をシンプルかつ効率的に行う手段を提供できるよう注力しています。

図 5新規アプリケーション GNOME Documents

オンラインアカウントとの統合により、ローカル/オンラインを問わず、ドキュメントの検索が同じようにできるようになりました。

図 6オンラインのドキュメントを表示する GNOME Documents

2.6. ファイルマネージャーからファイルをすばやくプレビューする

ファイルマネージャー で、ムービーや音楽、写真、およびその他のファイルをすばやくプレビュー表示できます。プレビューの表示/非表示は、スペースバーで切り替えます。

図 7GNOME 3 リリースパーティの写真のクイックプレビュー

2.7. 大きな統合

2.7.1. カラーマネージメント

色の表示方法の違いにより、同じ写真でもモニターが違えば見え方も異なります。同じように、写真を印刷するときも、色に違いが生じます。

GNOME 3.2 では、デバイスをキャリブレーションして、色の表示を実際に近づけることができるようになりました。

図 8システム設定のカラーマネージメント

2.7.2. 組み込みのメッセージング機能

チャットにサインインするのと、メッセージングサービスを利用するのとで、それぞれ別のアプリケーションを起動する必要はなくなりました。3.2 では、GNOME がその役目を担ってくれます。

  • 画面右上角のユーザーメニューから、在席中かオフラインか状態をすばやく切り替えられます。
  • 新しい相手からのリクエストや、音声/映像での呼び出し、ファイル転送などの受け入れ/拒否を簡単に行うことができます。
  • チャットやメッセージングサービスの接続に問題がある場合は、通知がなされます。

2.7.3. ワコム グラフィックタブレット

ワコム グラフィックタブレットの設定をシステム設定から行うことができます。

2.7.4. ログイン画面

GNOME 3 のログイン画面は、他のユーザーエクスペリエンスと統一されるようになりました。

図 9ログイン画面

2.7.5. タッチスクリーンデバイス

タブレットや同種のタッチスクリーンデバイスでは、デバイスを回転すると自動的に画面も回転します。また、タッチスクリーンデバイスでは、マウスを接続しない限りマウスカーソルは表示されません。

2.7.6. メディアのホットプラグ

GNOME 3 には、メディアのホットプラグ通知の機能が統合されました。

図 10ホットプラグ通知

2.7.7. 知人の連絡先の検索

アクティビティ画面の検索ボックスから知人の連絡先を検索できます。

図 11アクティビティ画面での連絡先の検索

2.8. 本当に助けとなるドキュメント

従来のユーザードキュメントは、良い話であるが非常に長く、通読するのに時間がかかる紙の本のように書かれています。これは、あるタスクを行なう方法を手早く見つけ出したいのであれば、理想的ではありません。この取り組みで、以下のアプリケーションはトピック指向のドキュメンテーションを含むようになりました:

  • アクセシビリティの探索を行う Accerciser
  • 統合開発環境 Anjuta
  • CDやDVDの書き込みアプリケーション Brasero
  • ウェブカメラアプリケーション Cheese
  • 画像ビューアー Eye of GNOME
  • メール/カレンダーアプリケーション Evolution
  • リモートデスクトップビューアー Vinagre

また、Desktop Help にも大きな改良と機能強化を行いました。

2.9. いっそう美しく

3.2 では、外観を洗練させる変更が多く加えられ、今までよりもいっそう美しくなりました。これは、GTK+ における CSS サポートの成果がなければ実現できなかったでしょう。変更内容については、開発者向けセクションの セクション 4.2 - GTK+ 3.2 をご覧ください。

次の点で洗練さを増しています。

  • ダークテーマ: メディアアプリケーションでは、固有のダークテーマが使われるようになっています。このテーマは、ムービープレイヤー画像ビューアーで使用されています。
  • ウィンドウの角は、アンチエイリアス処理によりなめらかになりました。
  • チャットのメッセージ通知は、より視覚的に心地良いものになりました。
  • ネットワークダイアログなどさまざまなダイアログが、GNOME Shell のスタイルと適合する外観を持つようになりました。
  • 細かい部分にも様々なビジュアル面での改良があります。たとえば、ボタンラベルの影や、インラインツールバーや盛り上がって見えるボタンスタイル、および押された状態のボタンの改良などがあります。さらに、フォーカスを示す矩形は、キーボードを使ってアプリケーションを操作する場合にだけ表示されるようになりました。

2.10. ちょっと待って、まだまだあります…

大きな変更だけでなく、いろいろなちょっとした機能追加や調整が、どのリリースの GNOME にも見られます。

  • Apple Filing Protocol (AFP) で共有されたドキュメントのアクセス・修正機能

  • 動画プレイヤー で動画を回転するプラグインが追加されました。写真用のカメラやスマートフォンなどで録画された、縦横の方向が間違っている動画に使えます。

  • 暗号と認証の改良:

  • Empathy の以前の会話にかんするログビューアーは、よりすっきりしたデザインになりました。また、Empathy は SMS メッセージの送信もサポートし、SIP アカウントには PSTN 通話が可能かのマーク付けもできるようになりました。

    図 12Empathy ログビューアー
  • NetworkManager バージョン 0.9 は、すばやいユーザー切り替え、改良された WiFi ローミング、WiMAX のサポート、柔軟な承認、およびネットワーク接続情報の集中化などの機能を提供します。

  • Evolution は、Google のアドレス帳に保存した連絡先の画像を表示できるようになりました。さらに、メールサーバーのポート番号が設定できることを明確にするために、個別のフィールドを追加しました。

  • テキストエディターの Gedit では、Mallard や Markdown ファイル向けの新しいスニペットが利用可能になり、クイックオープンや検索のダイアログも一新されました。

  • さまざまなパフォーマンスの改善。フルスクリーンの 3D ゲームに関する改善は特に注目に値します。

  • システム設定の地域パネルでの地域設定機能。

  • 再設計されたフォント選択ダイアログ。

    図 13新しいフォント選択 (Gedit)