GNOME 3.26 の紹介:“Manchester”

3.26 は GNOME の最新リリースであり、GNOME コミュニティの 6 か月間の成果となるものです。新機能を搭載し、細かな改良や機能強化もたくさん加えています。今回のリリースは、全体でおよそ 778 の人々による 24105 件もの貢献のたまものです。

3.26 には“Manchester”という名前が付いています。これは、今年の GUADEC 運営チームに敬意を表して名付けられました。GUADEC とは、年一回行われる GNOME の主要なカンファレンスであり、地元のボランティアの人たちの多大な尽力があってはじめて実現できるものです。今年はイギリスのマンチェスターで開催され、大成功を収めました。マンチェスターチームに感謝!

設定の新画面

GNOME 3.26 で設定アプリケーションに新しいレイアウトを導入しました。以前のアイコングリッドをやめ、サイドバーを採用することで異なる設定画面への切り替えをその場で行えるようになっています。新しいサイドバーにより、設定アプリケーション内の移動がより簡単に素早く行え、よく使われる設定にすぐアクセスできるようになりました。またこれは、設定ウィンドウが大きくなりサイズ変更可能になったことも意味し、多くの場合より使いやすくなっています。

今回の変更の一部として、ネットワーク設定にも改良があります。Wi-Fi設定は専用の設定画面も設けました。あわせてネットワーク設定ダイアログも作り直し、より整理され、分かりやすく、使いやすいものに仕上がりました。

カラー絵文字 👍💎🍩🐈

カラー絵文字が GNOME でサポートされました。カラー絵文字がどこで使われても、フルカラーで美しく表示されます。また、絵文字の様々な入力方法も GNOME 3.26 で導入されました。文字アプリケーションを使えば、絵文字を参照、検索でき、さらにメッセージやドキュメントへのコピーもできます。Polari (GNOME の IRC クライアント) は専用の絵文字ピッカーを搭載しました。また同様のツールが他のアプリケーションでも利用できるように対応が進められています。

ブラウザーの同期

Web (GNOME Web ブラウザー) では、Firefox Sync サービスを利用してブックマークやパスワード、履歴などを同期できるようになりました。この機能により、こうした情報のオンラインバックアップを維持でき、またデスクトップやモバイルの Firefox とも共有することができます。

Firefox Sync のセットアップは、Web のアプリケーション設定から行えます。

ディスプレイ設定のデザインを一新

GNOME のディスプレイ設定は 3.26 でデザインを改めました。新しいデザインでは重要な設定項目を最上部に配置し、ディスプレイ設定の要点を把握しやすくしました。複数のディスプレイを接続している場合も、目的に適ったディスプレイの使用方法をシンプルな一連のボタンから簡単に選ぶことができます。

今回のディスプレイ設定の改良には、新たなスケーリング設定のお試し版も含まれています。画面に表示されるものの大きさを、ディスプレイの画面密度 (一般に PPI または DPI で表されます)にマッチするように調整することができます。それにより、コンテンツが適切な大きさで表示され、文字の読みやすさや視認性も向上します。

ディスプレイのスケーリング設定機能は、今後のリリースでいっそうの成熟が見込まれています。より安定して使うには、Wayland over X11 を推奨します。X11 はディスプレイごとの設定をサポートしていません。

システムの改良

GNOME 3.26 では、見た目の改善もたくさん目に付きます。一部を紹介します。

  • ウィンドウを最大化したり、元のサイズに戻したり、あるいは画面半分に配置したりするときの遷移がより滑らかになりました。見栄えも改善され、画面で何が起きているかを把握しやすくなります。

  • アクティビティ画面のウィンドウサムネイルのサイズを大きくしました。これにより、ウィンドウを選択しやすくなります。

  • 最大化ウィンドウがないときは、トップバーが透過色になります。より美しく、開放感あふれるデスクトップとなります。

  • アプリケーションが応答しないときのダイアログのスタイルを改善し、より統一感のある洗練されたデザインにしました。

これだけではありません…

いつものように、他にも細かな改良点が今回のリリースにはたくさんあります。そのうちの一部を紹介します。

  • Boxes (GNOME の仮想マシン、リモートマシン用アプリケーション) は、仮想マシンとホストコンピューターとの間でフォルダーを共有できるようになりました。Box 設定から共有したいフォルダーを選択するだけで、簡単にこの機能を利用できます。共有フォルダーは、ゲスト環境ではネットワークドライブとしてアクセスできます。

  • ソフトウェアアプリケーションでは、更新を種類別にグループ化し、更新中の進捗情報をより正確に表示するようになりました。

  • シンプルスキャン (画像やドキュメントをスキャンするための GNOME アプリケーション) は、3.26 でインターフェースの改良を行いました。スタート画面に便利なガイダンスを導入し、編集ツールの分かりやすさを改善しました。また、設定画面をヘッダーバーからアクセスできるようにしました。

  • ログは、同一メッセージをひとまとめにできるようになりました。これにより履歴を簡潔にでき、探しているメッセージを見つけやすくなりました。

  • Polari (IRC アプリケーション) は、あたらしい初期セットアップアシスタントを実装し、接続のチャットの開始を簡単にできるようにしました。

  • ディスクでファイルシステムをリサイズするときに、パーティションのサイズ変更もできるようになりました。これにより余計な手間を減らすことができます。

  • 地図も、細かな改良がたくさんあります。新しいショートカットを追加し、場所に関する情報もより詳細になりました。また、ルートを調べるときに直近の移動手段を記憶しておくようになりました。

  • GNOME のカレンダー、連絡先、To Do、およびメールアプリケーションは、オフラインでできることが増えました。インターネットに接続していないときでも多くの項目を編集でき、次にオンラインになったときに変更がアップロードされます。

  • 写真にズーム用の新しいコントロールを設けました。

  • カレンダーは、繰り返し発生するイベントの追加、編集ができるようになりました。

  • 端末は、ハイパーリンクを強調表示し、簡単に開けるようにしました。

  • Evolution は、新しい To Do バーを設け、近く予定されているイベントやタスクの一覧を表示することができます。また、Evolution を使用するにあたって、メールアカウントが不要になりました。

  • Tweak Tool は、Tweaks と名前を変更しました。また、次の三つの設定項目を新しく追加しました。ウィンドウボタンの位置を左と右で切り替えるオプション、タッチパッドをタイピング中は無効化するオプション、およびトップバーにバッテリー残量を表示するオプションです。また、不要なものを取り除きいっそうの改善を行いました。

GNOME 3.26 では、ステータスアイコンを画面の左下隅に表示することを止めます。これにより、ステータスアイコントレイが表示の邪魔になることはなくなり、また総合的にみてより良質なデスクトップ体験の提供できるものと考えています。ステータスアイコンをなくしたことが、ユーザーにとって深刻な問題を引き起こすことはないでしょう。とはいえ、ステータスアイコンが必要となる場合は、TopIcons 拡張機能を使って復活させることができます。この変更に関するより詳細な情報については、これを論じたブログ記事を参照してください。

さらに

GNOME 3.26 の入手

GNOME の各ソフトウェアは自由ソフトウェアです。すべてのソースコードはダウンロードして入手可能であり、修正、再配布も自由に行うことができます。インストールにあたっては、お使いのベンダーやディストリビューションが公式パッケージとして提供するまで待つことを推奨します。人気のあるディストリビューションでは、すぐに GNOME 3.26 が利用可能になるでしょう。開発版において GNOME 3.26 がすでに利用できるディストリビューションもあります。

GNOME について

GNOME プロジェクトは、国際的なコミュニティであり、非営利の GNOME Foundation によって支えられています。GNOME は、ユーザー体験の向上、第一級の国際化対応、およびアクセシビリティの改善に重点的に取り組んでいます。GNOME は自由でオープンなプロジェクトです。その意志があれば、あなたも参加できます