新しくなったこと 〜ユーザ向け〜

GNOME プロジェクトでは数百のバグを修正し、ユーザからの要望に基づいた改良を行いながら、GNOME 2.28 においても引き続きユーザとそのユーザビリティに重点を置いたものになっています。非常にたくさんの改良が施されているため、全ての変更と改善点をこのページだけに列挙することはできません。そこで、今回リリースされた中でユーザの立場に立ったワクワクするような機能のいくつかにスポットを当てて紹介することにします。

3.1. 接続ケーブルが消えた

GNOME 2.28 には GNOME Bluetooth モジュールの最初のリリースが含まれています。このモジュールで Bluetooth デバイスを管理することができます。GNOME Bluetooth ではマウスや、キーボード、ヘッドセットを含む数多くの Bluetooth デバイスをサポートしています。GNOME Bluetooth では Bluetooth ヘッドセットやヘッドフォンと、PulseAudio を統合します。

GNOME Bluetooth では携帯電話経由でのインターネット接続もサポートします。GNOME Bluetooth で携帯電話とペアリングすると、Network Manager には携帯電話経由でのインターネット接続のためのエントリが出現します。

図 2GNOME Bluetooth

3.2. 時間の記録が改良された

時間と仕事を記録していくタイム・トラッカー アプレットには多くの改善点があります。

カテゴリと、カレンダーの概要を表示する期間グラフを統合したまったく新しい概要の画面が提供されるようになりました。開始時刻には色が使われ、仕事を達成するのに要する時間の割合を簡単に見ることができるようになりました。

他の機能更新としては、開始時間をその場ですぐに更新できる改良された自動補完機能、深夜に働く人のためのサポートの改良、実行完了した以前のタスクを追加可能に、といっものがあります。最後に、エクスポート機能がかなり改善されました。エクスポートする前に、カテゴリや日付でアクティビティをフィルタできます。また、Evolution や Google カレンダーや他のソフトにインポートできる iCal 形式、XML、スプレッドシート向きの TSV (タブ区切り形式) など、新しいシンプルなエクスポート形式もサポートするようになりました。

図 3タイム・トラッカー

3.3. Empathy インスタント・メッセンジャー

Telepathy コミュニケーション・フレームワークを使用して作られている、GNOME のインスタント・メッセージング、およびコミュニケーションのためのアプリケーション Empathy にはユーザのコミュニケーションに役に立つ新しい、重要な機能がいくつも追加されました。

コンタクト・リストは多くの点で改良されました。ステータスをテキストで直接入力することで設定でき、また、以前に設定したステータスからも選択できます。コンタクトの整理も簡単になりました。コンタクトをドラッグ・アンド・ドロップで移動するだけです。表示メニューが追加され、コンタクトを簡単に並べかえたり、オフラインのコンタクトを表示したり、コンタクト・リストの大きさの設定を変更できます。

図 4Empathy コンタクト

会話ダイアログで Adium メッセージ風など、たくさんの新しいテーマをサポートするようになりました。ユーザ一覧中の「ユーザ」にツールチップが追加されました。チャット・ルームのユーザ一覧を非表示にできます。会話メニューからコンタクト・メニューが削除されました。そして、あなたの名前がチャット・ルームや会話中に登場すると、そのタブの文字が赤くなります。

音声および動画チャットをフルスクリーンにすることができるようになりました。コンタクト先が動画に対応していない場合、アバターが表示されます。リダイアル機能が追加され、簡単に再接続できるようになりました。

Empathy でデスクトップの共有ができるようになりました。GNOME リモート・デスクトップ・ビューアである Vino を使います。

Jabber や Google Talk などの XMPP のコンタクトでは、Geoclue を利用して位置情報がサポートされるようになりました。コンタクトのいる場所は、コンタクト一覧や、情報ダイアログ、および地図表示でコンタクトの名前の上にマウスを動かすと見ることができます。Empathy ではプライバシーを強化したいユーザのために、精度を落とすこともできます。Google Talk ユーザはコンタクトの位置を見ることができますが、位置情報を公開することはできません。Google が PEP を使っていないためです。

Empathy にはまったく新しいドキュメントが含まれています。Empathy で個々の操作をどのように実行すればいいのかを知る助けになります。

3.4. Epiphany ウェブ・ブラウザ

GNOME ウェブ・ブラウザである Epiphany はレンダリング・エンジンを Gecko から WebKit に変更しました。パフォーマンスの向上を除けば、この変更は目に見えません。長い目で見れば WebKit への変更には Epiphany のユーザにとって大きな御利益があります。WebKit への変更により、古い Gecko ベースのバックエンドに起因していた Epihany の未解決の多くのバグを修正できました。この新しいバージョンを試してみて、以前に遭遇した問題が解決しているかどうか、ぜひ確かめてみてください。

Epiphany が WebKit に乗り替えたことにより、ログイン名やパスワードを保存できない、という現象のバグに遭遇するかもしれません。このバグは 2.30 の開発中に解決されることでしょう。

3.5. 動画プレイヤーの改善点

GNOME のメディア・プレイヤー での DVD の再生は改善されました。DVD メニューの操作や前回再生した位置から再生を再開できるようになりました。YouTube プラグインも速度が向上しています。

3.6. カメラににっこり

ウェブカメラの写真、動画アプリケーションである Cheese も数多くの改善があります。ユーザ・インターフェイスを更新し、一度に複数の写真を撮る「バースト」モードを追加しました。Cheese が撮影する枚数と、撮影間隔の時間を選択できます。Cheese ではウェブカメラの「撮影」ボタンを使って写真を撮ることもできるようになりました。

Cheese のユーザ・インターフェイスはネットブックなどの小さな画面向けに最適化されました。画像のサムネイル・バーを右へ移動しました。以下のスクリーンショットでは、ネットブック向けに最適化したワイド・モードでバースト・モードを使ってる様子を示しています。

図 5ネットブック向けのワイドモード

Cheese についての詳細は、ここを見てね!

3.7. PDFに注釈を付ける

Evince ドキュメント・ビューアでは、テキストによる注釈を編集、保存できるようになりました。それぞれの注釈はポップアップ・ウインドウで表示されます。Evince ではクラッシュした後に表示した文書の復元もできるようになりました。

Evince が Microsoft Windows® プラットフォームに移植され、利用可能になりました。

3.8. フェード・イン、アウト

音量調整ツール ではサブ・ウーファーの調整と、チャンネルのフェーディングができるようになりました。また、設定を変更するとそれがすぐに適用されるようになりました。

図 6サブ・ウーファーとフェードのサポート

3.9. えーと、まだまだあります...

前述した大きな変更の他にも小さな追加や (毎度おなじみの) 改善点をいくつか紹介します。

  • GNOME のメニューやボタンでは、デフォルトではアイコンを表示しないよう、全体を通じて標準化されました。動的なオブジェクトのあるメニューのアイテム、たとえば、アプリケーション、ファイル、ブックマーク、デバイスなどはその例外で、アイコンを表示できます。この変更によりルック・アンド・フィールを標準化し、よりすっきりしたインターフェイスをユーザに提示していきます。
  • Tomboy メモ は保存したメモや設定ファイルの保存場所をfreedesktop.org の標準に合致した場所に移動しました。
  • 電源の管理 は複数のバッテリを持ったラップトップもサポートするようになりました。DeviceKit のディスクでディスクのスピンダウンもできりょうになりました。
  • GTK+ のファイル・lpr 印刷バックエンドでは複数のページをシートごとに印刷する機能を追加しました。
  • Gedit が Mac OS® X に移植されました。
  • Pango が新しい OpenType エンジンを使うようになってメモリの使用量が少なくなり、壊れているフォントのサポートを改善することによって、テキストのレンダリングが向上しました。
  • VTE の改善によって、GNOME 端末 でのメモリの使用量がかなり減りました。
  • GNOME CD/DVD 作成ツール である Brasero が複数のディスクに分割してデータを書き込むことができるようになりました。また、書き込む前にディスクの使用量をグラフィカルに表示できるようになりました。