新しくなったこと 〜ユーザ向け〜
GNOME プロジェクトでは数百のバグを修正し、ユーザからの要望に基づいた改良を行いながら、GNOME 2.24 においても引き続きユーザとそのユーザビリティに重点を置いたものになっています。但し非常にたくさんの改良が施されているため、全ての変更と改善点をこのページだけに列挙することができないので、今回リリースされた中でユーザの立場に立ったワクワクするような機能のいくつかにスポットを当てて紹介することにします。
- 2.1. 連絡を取り合う
- 2.2. 時間を上手に記録していく
- 2.3. Ekiga 3.0
- 2.4. ファイルの管理
- 2.5. デスクバーを使っていろいろなことをやる
- 2.6. 新しい画面の解像度の設定ダイアログ
- 2.7. サウンドのテーマの新しいサポート
- 2.8. 改善されたデジタル・テレビの機能
- 2.9. 格別な美しさ
2.1. 連絡を取り合う
GNOME 2.24 に Telepathy という通信専用のフレームワークに準拠したインスタント・メッセンジャー・クライアントが加わりました。
さらにこの Empathy は、Nokia の N800/N810 デバイスで提供されている XMPP/SIP プロトコル・ベースの音声と映像を用いたネット会議を行えます (但し、映像を有効にするにはシステムにインストールされている GStreamer が H.263 コーデックをサポートしている必要があります)。Empathy は Ekiga とはかなり密接な関係にあります。Ekiga は音声と映像をサポートした GNOME の SIP クライアントです (詳細は「セクション 2.3 - Ekiga 3.0」をご覧下さい)。
Telepathy はアプリケーションからインスタント・メッセンジャーの機能にアクセスするための汎用的なフレームワークを提供しています。このライブラリを使うと、例えば Jabber/XMPP とか Google Talk、MSN Messenger、Apple の Bonjour/Rendezvous (ローカル・ネットワークのチャット) といったたくさんのプロトコルを使いこなせます。
さらにアプリケーションからインスタント・メッセンジャーのセッションを利用できます。Empathy のクライアント同様に、GNOME 2.24 では在席情報やそのステータスをアプリケーションに追加できるライブラリや、他のアプリケーションとコラボレーションしたりインターネット越しにゲームを楽しむためにファイルを転送したり、チューブと呼ばれる一種のソケットの設定を行えるライブラリを提供しています。これらの技術をアプリケーションに適用する方法など詳細は「セクション 4.4 - インスタント・メッセンジャー用のライブラリ 」をご覧下さい。
2.2. 時間を上手に記録していく
多くのビジネスマンにとって、いろいろな課題を解決したり得意先を訪問するのにどれだけの時間を割いているかを正確に記録し分析しておくことは大切なことでしょう。そのために多くの人達が専用の「システム」を持ち歩きます (例えば日記のようなものをつけるとか自分の記憶に頼るとか)。とはいえ、それは信じられないほど退屈な作業です。今日の世界ではほとんど全てのことをコンピュータを使って何とかできます。そういうわけで、GNOME 2.24 には簡単に時間を記録しておくことが可能なパネル・アップレットが新たに追加されました。
あなたが今どんな作業をしているのか、そしてそれにどれくらいの時間をかけているのかといったことがパネルに表示されるようになっています。このアプレットのボタンをクリックするとアクティビティを変更したり、本日のアクティビティ度を表示することも可能です。必要であれば、コンピュータがアイドル状態になった時に計測を一旦停止するような設定にすることもできます。
アクティビティはいろいろなグループに分類できるようになっており、アクティビティの種類とか得意先の名前とかも記録できます。また、アクティビティのログを表示したり編集することも可能で、日間/週間/月間の単位で一番時間を費やしたものをグラフで表示することも可能です。
2.3. Ekiga 3.0
Ekiga は SIP ベースの音声及び映像を用いたネット会議を行う機能が満載な GNOME のクライアントです。この Ekiga 3.0 が GNOME 2.24 に合わせてリリースされたことを光栄に思います。
この Ekiga 3.0 はアドレス帳や従来の在席情報のインタフェースが新しくなったのに加え、SIP を使った新しい在席情報の追加や PBX 回線の監視、従来よりも良い映像を提供するコーデック (H.264 と H.263+ と MPEG-4、Theora) のサポート、動画のアクセラレーション、フルスクリーン表示、そして「堅牢な」ネット会議を行うために SIP 関連の改善など、ほんとうに機能が満載です。
2.4. ファイルの管理
GNOME 2.24 では従来のアイコン表示と一覧表示に加え、既に他のデスクトップ環境ではお馴染みのコンパクト表示が新たに追加されました。メニューからControl+3 を押下してみて下さい)。
を選択してみて下さい (あるいはキーボード・ショートカットとしてアイコン表示と一覧表示同様に、コンパクト表示におけるアイコンの大きさは
メニューにあるズーム・オプションを用いて変更することができます。新たにファイル・マネージャのブラウザ・モードでタブをサポートすることになりました。1つのブラウザ・ウィンドウの内容をコンテンツに持つ複数のタブを素早く切り換えることが可能です。
現在使われているほとんどのファイルシステムは、ファイル名にどんな文字でも指定できるようになっています。但し、残念ながら FAT のファイルシステムは例外です。一般的に FAT は USB Thumb ドライブとか携帯式の楽曲プレイヤーで使われており、ファイル名に句読点の文字を含めることができません。GNOME 2.24 では、ファイルをコピーする時にファイル名として使用できない文字が含まれていることを検出し、自動的にそれらの文字を "_" (アンダースコア) で置きかえていくようになったので、ユーザが改めてファイル名を変更する必要はありません。
GNOME 2.24 ではファイル名の自動補完 (Tab 補完) も改善されました。場所バーで Tab キーを使ったファイル名の補完処理がさらに高速になり、予測の精度 (検出できる候補の数) も上がりました。さらにパス名の区切り毎に補完を完了できるようになり、候補が全く見つからなかった場合のフィードバックも提供できるようなりました。
2.5. デスクバーを使っていろいろなことをやる
GNOME 2.24 に含まれるデスクバーには面白そうな新しいプラグインがいくつか追加されています: 電卓、Google 検索 (とコード検索)、Yahoo!、Wikipedia Suggest、そして Twitter と identi.ca の改良版です。
さらに、直接インターネット上にあるデスクバーのプラグイン・リポジトリから新しいプラグインを簡単にダウンロードしてインストールすることができるようになりました。
2.6. 新しい画面の解像度の設定ダイアログ
非常に多くのコンピュータ (特にラップトップ) でマルチヘッドと呼ばれる複数モニタのサポートが増えてきています。2台目のモニタに接続できるユーザも増えてきているのはコンピュータをクローン (例えばプレゼンを発表する際のプロジェクタ) として利用するか、あるいはデスクトップ環境を拡張するケースが出てきたということでしょう。
GNOME 2.24 には改良が施された画面の解像度の設定ツールが含まれています。X.Org が策定した新しい XRandR バージョン 1.2 の仕様に対応したこの設定ツールのダイアログを使えば、ユーザは簡単に複数ある設定をそれぞれのモニタに適用していくことができます。モニタにはそれぞれ名前が付けられ、その名前が画面の左上に表示されるので簡単に現在の画面を識別できます。
ここで変更した内容はすぐに反映されます。GNOME の再起動は必要ありません。
X.Org 提供のビデオ・ドライバの中には XRandR のバージョン 1.2 の仕様をサポートしていないものがいくつかあり、この新しい機能の恩恵を受けることができないかもしれません。そのようなドライバの一つにプロプラエタリな nVidia 向けのXのドライバがあります。
2.7. サウンドのテーマの新しいサポート
GNOME にインストールされているいろいろなサウンドのテーマを libcanberra というライブラリで扱えるようになりました。このライブラリは Freedesktop.org の Sound Theme and Naming Specification という仕様を実装しています。これによりサウンドのテーマは従来のアイコン・テーマと同じようにインストールできるようになりました。この libcanberra ライブラリを使うことで、楽曲プレイヤーや動画プレイヤーの再生や演奏を邪魔することなくアプリケーションの警告音を鳴らすことができ、例えばフルスクリーン・モードで映画を鑑賞している時に警告音が鳴っても (何の音が鳴っているのか確かめるために再生を一時停止して) 画面モードを切り換える必要がなくなりました。
2.8. 改善されたデジタル・テレビの機能
GStreamer マルチメディア・フレームワークを採用し、GNOME 2.22 で追加されたデジタル・テレビ (DVB) の機能が動画プレイヤーにも導入されました。品質をもっと良くしようという強い決意の下に、たくさんの開発者たちが参加し複数の DBV チューナに対するサポートを追加する (すなわち、一度に複数のチャンネルを観ることが可能になる) という拡張を施した上に、トラブル発生時の診断処理も改善しました。
さらに開発者らは LIRC のフレームワークを使った赤外線リモート制御の大部分で、Zero Configuration による設定なしで「すぐに使える」(out-of-the-box) 機能のサポートを改善してきました。
さらに GNOME 2.24 の機能として、高解像度な YouTube の動画再生やその動画にリモートから字幕を入れる機能もサポートしました。