新しくなったこと 〜ユーザ向け〜

GNOME プロジェクトでは、数百のバグ修正とユーザの要請による改良とともに GNOME 2.14 においても引き続き、ユーザとユーザビリティにフォーカスしています。しかし非常に多数の改良があるため、なされたすべての変更と改良を列挙することは不可能です。このページは GNOME のこのリリースにおいてユーザ中心でよりエキサイティングないくつかの主要なものを強調することを期待しています。

1.1. パフォーマンスの向上

ちょうどあなたが自分の車をチューンするのと同じように、スキルのあるエンジニアは可能なかぎり高速に動作するように GNOME の多くの部分をチューンしようとするものです。テキストの描画、メモリ領域の確保、そして数えきれないほど多くのアプリケーションを含む GNOME デスクトップのいくつかの重要なコンポーネントは今では適度に速く動作するようになりました。

いくつかのアプリケーションについては間違いなく最良のパフォーマンスとなるように特に注意を払っています。GNOME の端末エミュレータである GNOME 端末は、より高速であると同時によりリソース消費の点で効率が良くなるように、いくつかのやり方で最適化されました。GNOME ログビューアは今では以前よりも20 倍高速に起動します。

図 1GNOME 2.12 と 2.14 の間の GNOME 端末のパフォーマンスの向上。画面にすべての英語の語句の一覧を表示するまでの時間を計測
図 2GNOME 2.12 と 2.14 の間のログビューアのパフォーマンス向上。アプリケーションの開始から 2.9MB のログファイルを読み込むまでの時間を計測

1.2. より高度な検索

GNOME ファイルマネージャ Nautilus では、デスクトップまたはファイルマネージャのウィンドウ内で (Ctrl-F) を押すと強力な検索インターフェースを利用することができます。

図 3Nautilus で検索

検索条件は簡単に組み立てられ、フォルダ内かデスクトップ上に保存できます。保存された検索条件は後でフォルダのように開くことができます。

Beagle 検索フレームワークが利用できるなら、Nautilus はそのさらなる高速性、より文脈にそった検索能力を活用します。

1.3. その他のヘルプ

また GNOME ヘルプブラウザはあなたのマシン上にインストールされているヘルプとドキュメントを検索する新しい機能を備えています。GNOME の高品質なドキュメントとともに GNU Info と伝統的な UNIX マニュアルページ両方にアクセスし、非常に高速にシステムにあるほとんどの文書を検索することができます。

図 4ヘルプを検索し、GNU Info ファイルとマニュアルを見る

ファイルマネージャと同様に、Beagle 検索フレームワークがあればより高速で正確な検索ができるようになります。

1.4. Ekiga

Ekiga は以前 GNOME Meeting として知られていた GNOME の音声とビデオ・オーバー IP クライアントです。Ekiga は SIP と H323 プロトコルの両方をサポートしています。SIP は、Google Talk や Asterisk、そして多くのソフトウェアおよびハードウェアの VoIP デバイスで使わている、人気のあるプロトコルであり、最近 Ekiga に追加されました。H323 はより旧式の通信プロトコルであり、Microsoft Meeting といくつかのテレコム機器で使われています。

また Ekiga はネットワークアドレス変換 (NAT) を含む多くの種類のファイアウォールをを介した中継を可能にするために STUN 機能をサポートしています。これはつまり Ekiga を使うとパブリックの IP アドレスまたはルータからのポート転送なしに電話をかけたり着信したりできるということです。

図 5Ekiga で SIP 呼び出し

またユーザはインターネット上のどこからでも電話をかけ、着信するのに利用できる SIP アドレスを提供する Ekiga.net にアカウントをセットアップすることもできます。

1.5. 改良されたウィンドウ管理

ウィンドウ管理を改善するために Metacity にいくつかの新機能が追加されました。今やウィンドウの端は磁力を持ち、ウィンドウを互いに"クリック" できます。Metacity の複数のモニタ (ヘッド) の扱いも改良されました。Metacity は一つのモニタまたは他のモニタの上でモニタ境界を越えて表示したいウィンドウを移動しようとします。

同じ X サーバからの複数のマシンのユーザと管理者を助けるために、ローカルに実行されていないウィンドウについてホスト名がタイトルバー内に表示されます。これは特にマシンの設定を GUI で変更する際に、あなたが正しいマシン上で変更を行っていることを確実にするのに便利です。

図 6ローカルに実行しているウィンドウとリモートのそれを識別

1.6. デスクバー

デスクバーは GNOME の新顔です。パワーユーザとキーボード愛好家、古いパネルのコマンドラインのユーザにはこれがその置き換えであり、信じられないほど強力で簡単に使えることがわかるでしょう。デスクバーは(python で書かれた) プラグインで、プログラム、ファイル、フォルダ、ブックマーク、連絡先やその他多くを検索する機能を提供しています。またデスクバーは Google Live と Yahoo、Beagle のライブ検索機能を使うこともできます。

図 7'net' を検索しています

デスクバーはパネル内モードと垂直パネルまたは空きスペースのわずかなパネルで使うための畳み込みモードの両方のモードを持っています。検索するには単純に (Alt-F3) を押し、語句を入力します。コマンド履歴をブラウズまたは検索することもできます。

1.7. ログインの改善

ログインシステム (GDM) について沢山の新しい改良が加えられました。デスクトップの至るところでみつかったパフォーマンスの調整点はログインシステムについてもみつかりました。様々なログイン機能に素早くアクセスできるようにするログイン・グリータの中に新しく拡張された "オプション" ボタンが追加されました。ユーザが X サーバに安全かつ簡単に接続できるように新しい "セキュアリモート" 機能が追加されました。またログイン・グリータの見た目も改善され、もっとユーザがカスタマイズできるようになりました。

図 8完全に再設計された GDM 設定ウィンドウ内で、今やあなたのログイン設定はこれまでよりもずっと簡単に変更できます。

注意: ユーザが設定した GDM 設定の保存に使われるファイルは /etc/gdm/gdm.conf から /etc/gdm/custom.conf に変更されました。さらなる詳細については GDM Project ページを参照して下さい。

1.8. 高速ユーザ切り替え

GNOME 2.14 にはデスクトップ間の高速なユーザ切り替えのサポートが含まれています。ログアウトと画面のロック解除ダイアログ両方が他のユーザへの切り替えのオプションを提供しています。またユーザ切り替えに素早くアクセスするためにパネルにメニューを追加することもできます。

図 9パネルからの高速ユーザ切り替え
図 10ロックされたセッションからのユーザの切り替え

1.9. 共有カレンダ

Evolution 2.6 に含まれる新しい機能は CalDAV を介した共有カレンダです。CalDAV 共有カレンダプロトコルは自由に利用可能な Hula サーバを含む数多くのグループウェアサーバに実装されています。

図 11Hula の共有カレンダの表示

1.10. よりスマートなブックマーク

Epiphany ウェブブラウザは www のブラウズをより簡単にし続けています。このリリースで新しいのは自動的なブックマーク階層の構築です。これは巨大なブックマークのコレクションを扱う負担を減らしますが、Epiphany で人気のあるより単純なトピックベースのブックマーク管理もそのまま残されています。トピックは今ではより簡単に選択、作成でき、Epiphany は過去の使い方に基づいたトピックを勧めさえします。

図 12改良されたブックマーク管理とスタイルシートコントロール

またこのリリースではユーザ定義のスタイルシートをサポートし、改良されたアクセシビリティとページ表示のユーザによるコントロールの機能を提供しています。舞台裏では、Epiphany は今や Firefox、Mozilla、あるいは XULRunner をそのバックエンドとして使うことができます。NetworkManager を使っているなら、Epiphany は自動的にネットワーク設定を検出することができます。

1.11. より良くなったエディタ

Gedit は、アプリケーションやウェブサイトを開発するために必要な機能すべてを備えた簡素なテキストエディタの使い易さを、引き続き提供しています。Gedit 2.14 で含まれた機能に、改良された複数ドキュメントの扱いとリモートのファイルの編集があります。例えば Gedit は今ではファイルブラウザから直接SFTP、FTP そして WebDAV ディレクトリ内で継ぎ目なくブラウズ、編集ができるようになっています。また HTML、PHP、PSP やその他多数の構文強調機能についても改善されています。これらの機能によって Gedit はユーザが必要とするすべてのタスクを処理できる強力なテキストエディタとなっています。

図 13Gedit は複数のソースファイルを簡単に扱い、ローカルに、あるいはネットワーク上でそれらを開き、保存することができます。

また新機能として Gedit のためのプラグインを Python で記述できるようになっています。これによって強力なプログラマでなくとも Gedit の機能をを簡単に拡張、カスタマイズできます。外部コマンドの実行、タグに基づいた補完のサポート、そして対話的な Python コンソールといった便利ないくつかのプラグインが Gedit に含まれています。

図 14外部コマンドプラグインのプロパティを表示するプラグインダイアログ

1.12. 画像ビューア

GNOME 画像ビューアは新しいナビゲーション主導のツールバーを備えています。画像を開く際には同じディレクトリの他の画像を簡単に見ることができます。

図 15同じディレクトリの画像を簡単にナビゲーション

1.13. 統合化されたスクリーンセーバー

GNOME は今や統合化されたスクリーンセーバーを備えています。GNOME スクリーンセーバーは Xscreensaver にある有名な "hacks" と互換ですが、Xscreensaver では利用できない沢山の新しい機能も持っています。GNOME スクリーンセーバーを認識できるアプリケーションはそれと通信し、標準的なインターフェースで "ブランク・スクリーンにしない" といったプロパティを設定することができます。画面ロックの解除などのダイアログは今ではそれぞれの言語に翻訳可能であり、英語を理解できないユーザもアクセスできるようにしています。これらアクセシビリティの向上は GNOME デスクトップ全体で行われている進行中のアクセシビリティの改善の一部であり、母語以外を理解できないユーザも簡単に画面のロックを解除できるようにしています。

図 16GNOME スクリーンセーバーのプロパティを設定

Xscreensaver を引き続き使いたいと願うユーザはまだそうできます。詳細についてはベンダのドキュメントを参照して下さい。

1.14. 最新の GStreamer

GNOME 2.14 は GStreamer 0.10 の技術を活用しています。GStreamer マルチメディアフレームワークは、Linux と Unix デスクトップ、組み込みデバイスで使われている、プラグインで拡張可能な音声と動画の強力なフレームワークです。最新の GStreamer のメジャーバージョンは以前のものよりもより高速で安定しています。異なるデバイス間の音声と動画の同期といった問題について解決の努力がなされ、スレッドやマルチメディアプラグインの動的処理の機能を持っています。GStreamer のさらなる詳細については GStreamer のウェブサイト を参照して下さい。

Totem、Sound Juicer そして音量コントロールを含む、GNOME とともに配布されているすべてのマルチメディア・アプリケーションは最新の GStreamer の強みを活用できるようにアップグレードされています。

また GStreamer 0.10 はサード・パーティのベンダーが配布するマルチメディア・プラグインをユーザが活用できるようにしています。これによって、(法的な理由で) 自由なコーデックが利用できない、あるいは再配布が不可能な場合に、ベンダーはライセンスされたコーデックのサポートを提供することができます。これにはAC3、WMA、MP3 などが含まれます。GStreamer の長期にわたるサポータである Fluendo によって、GStreamer 0.10 向けの MP3 プラグインが既にライセンスされ、自由に利用できるようになっています。

1.15. 簡単な設定

GNOME は、今もなお柔軟性を残しつつも、簡単に設定でき、ユーザに単純な選択をさせられるようにしています。GNOME コントロールセンターの中の数多くのエレメントは、素早く簡単に設定できるようにつくられています。

図 17一覧から選択するかコマンドを入力することで好みのアプリケーションを指定
図 18利用できるサウンドを一覧から選択するか、ファイルシステムから独自のファイルを選択します。